第七節 隣人ノ怪

第二十七討 知レドモ知ラヌ隣人

 いつだったろうか、この場所に入り込んだのは。


 乙女が集う学び舎。


 随分と楽しそうで、溢れるような生気が満ちる場所。


 惹かれた私は姿を偽り、紛れ込んだ。


 初等、中等、高等。


 どんな姿にもなれる、何処にだって入り込める。


 人の認識を惑わせる事なんて容易い。


 繰り返し繰り返し、同じだけど違う日常を楽しんだ。


 友人となったは数知れず。


 学ぶ事は多く、時を経るごとにその内容も変わっていった。


 共に卒業した娘が教卓に立つ。


 かつて隣で学んだ事を私に教える。


 彼女の記憶の中の私は朧気おぼろげで、顔も名も覚えていないだろう。


 私がそうした、だから間違いない。


 多少寂しさはあるが、大したことではない。


 これからも出会いと別れを繰り返すのだから。


 遠い昔からそれを繰り返してきたのだから。


 だから私は。


 現在友人愉しむ惑わすのだ。

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