第三章 姫とコラボで、またバズる

第13話 姫とパーティを組む

「喰らいなさい! 【ファイアボール】ッ!」


 メイヴィス・サマーヘイズ王女が、杖から火の玉を撃ち出す。


 今回は、【迷いの森】の近くにある廃墟砦に潜っている。森よりは階層も少なくてすぐゴールになる。が、敵が森よりちょっと強い。森でさえ、結構な戦闘レベルを要求されるのだが。


 全身甲冑の召喚獣、コンラッドのおかげで、前衛が楽だ。ほぼやることがない。


 メイヴィス姫の戦闘スタイルは、壁役の後ろから魔法を撃つタイプだ。


「魔素が少ない分、地球のダンジョンにいるモンスターは倒しやすいわね」


「とはいえ、油断はできませんよ」


「わかっているわ、コルタナ」


 氷の矢の全体攻撃で、自分を囲んでいた魔物をすべて撃退した。


 コルタナさんは、格闘戦も交えて魔物に攻撃をする。あれが本来の、コルタナさんの戦闘方法か。


 それにしても、メイヴィス姫のフォロワーがすごいな。一億人とか、初めて見たよ。王族だから、慕われているんだろうけど。


 メイヴィス姫が戦う度に、コメントが爆発的に盛り上がっている。


 ボクは、目立たない方がいいのか? なんて思っちゃう。


 コルタナさんとセンディさんも、トッププレイヤーの一角だし。


 こんな人たちと、ボクはパーティを組んでいるのか。まだ、信じられない。


「ようやくオレも、元の戦闘スタイルにできるぜ」


 センディさんが、刀に魔法を通す。青紫色の魔力を流し込んだ刀で、魔物たちを切り裂いていった。音もなく、スパスパと敵を切り刻む。たとえ敵が脇道に隠れていても、センディさんは気配を感じ取って討ち取る。


【サムライ】のジョブに戻したセンディさんは、剣と盾を持っていた頃よりイキイキとしている。


「味方がほぼ全滅してしまったから、壁役をせざるを得なくなっちゃって。せっかく刀を打つために、鍛冶スキルまで取ったのに」


 コルタナさんが、そう教えてくれた。親の意向で、剣道を学んでいたそうだ。


 ボクたちも、自分の仕事をする。姫のフォロワー数なんて、気にしてもしょうがない。


「ワラビ、サポートをお願い」


 ボクは自身が前衛に立って、ワラビに魔法を撃ってもらう。

 メイヴィス姫とは、逆のスタイルだ。

 ボクがワラビを守りたいから、このスタイルになった。


 氷の巨人が、ボクの前に立ちはだかる。


「アイスゴーレムだ!」


 コイツが、敵のボスか。またゴーレムだなんて。


「胸のところに、マジックアイテムが突き刺さっています。それを抜けば、敵は無力化できます」


「わかった! ボクがおとりになる!」


 危険な壁役は、ボクが引き受ける。

 そのスキに、ワラビには魔物の弱点をついてもらう。

 ボクは決死の覚悟で、ゴーレムの攻撃を弾く。

 ゴーレムの胸が、スキだらけに。


「今だよ、ワラビ!」


 ワラビが、敵のウィークポイントに到達した。ニュルンと、敵の懐に浸透する。マジックアイテムを飲み込んで、ワラビはゴーレムの背中から脱出した。


 アイスゴーレムが、ドロっと溶ける。

 ダンジョンを攻略し、帰ることになった。


「やっぱり強いわね、ワラビちゃん。あんたもだけど」


 メイヴィス姫が、ワラビを撫でる。

 ワラビはメイヴィス姫を乗せて、プルプルッ、と跳ねる。


「マスターツヨシが強くなったおかげで、わたしもさらなる強さを手に入れています」


「ワラビの奇策のおかげだよ」


 ボクが強いなんて、思っていない。ワラビに助けてもらって、ようやくボクも強くなった気がする。ワラビがいなければ、ボクはあと一年は第一階層で立ち往生していただろう。


「マスターは、パーティありきの戦闘スタイルなのに、ソロプレイをしていましたからね」


「コミュ力がねえ」


 たまたま上位勢のセンディさんたちがいてくれたから、強くなれただけなんだけど。二人がいなければ、ボクはどうなっていただろう? ムリに高難度のダンジョンに潜って、死んでいたかも。それこそ、スケルトンキングとかにやられていたに違いない。


「お前はこれからだろ、ツヨシ」


「そうよ。最初は誰でも初心者よ」


 センディさんとコルタナさんが、ボクを励ましてくれる。


 そんなもんかなあ。


 ギルドに戻って、装備品を更新する。


「このマジックアイテム、ボクには使えないみたいなんですが。姫は、いりますか?」


 手に入った装備品は、杖だ。


 ボクはアリモンスターが操っていたアイアンゴーレムを倒して、ヨロイなどは充実している。


「ワラビちゃんに、食べさせてちょうだい。あたしは、装備に困っていないの」


「では、遠慮なく」


 ボクはワラビに、装備を食べさせた。この間は、アイアンゴーレムの大半も食べたんだよなあ。


「身体は、なんともない?」


「はい。マスターツヨシが気に病むことでは、ございません」


 このままいくと、無限に強くなっていっちゃうんじゃ?


 ボクは必要なくなっていくかも?


「ワラビはボクより強くなったら、ボクを捕食して次の主を探すの?」


「とんでもございません。わたしが強くなれば、マスターツヨシも強くなるのです」


 どこまでも、テイマーとテイムモンスターは一蓮托生らしい。


「じゃ、強い装備はどんどんワラビちゃんに食べてもらいましょ。あたしたちは、センディに素材を渡して装備を作りましょう」


 いい素材も、全部ワラビに譲ってくれるそうだ。


「いいんですか? 異世界でも採掘できない素材が、地球のダンジョンにもあるのでは?」


「まあ、多少は必要になるでしょう。依頼品とか。でも、ワラビちゃんが強くなることが、あたしたちの生存にも関わってくるから」


 そうか。ワラビの戦闘力を上げたほうが、ボクたちのレベルアップにもつながると。


「これからもよろしくね、ワラビ」


「はい。マスターツヨシ」


 ワラビは、マジックアイテムを取り込む。


 パワワ、とワラビが光りだした。


「マスターツヨシ、わたしはレベルが上がったようです」

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