第5話「思っても見なかった」
私は今日、「
私は柊さんの彼女であり、私はとても大切にされていたらしい。とても説明がうまく、聞いているだけでもとても楽しくてわかりやすかった。
本当かどうかは何もわからないけど、柊さんの言っていることは信じられる気がする。
「莉菜。」
さっきまで楽しそうに話していた柊さんは、急に真面目な顔をして名前を呼ぶ。
「…どうしたの?」
私は少し動揺しながら聞く。
「実はね、莉菜は覚えてないかもだけど、今日は莉菜の誕生日なんだ。」
「そうなんだ。何歳になったの?」
「18歳。」
18歳って多分もう大人だよね。高校生でも大人になるんだ。
「それでさ、莉菜にプレゼントがあるの。」
柊さんは綺麗にラッピングしてある箱をバックから取り出し、私に差し出す。
「開けてみてもいい?」
「いいよ。」
リボンをほどき、箱を開けてみる。
箱の中には私と柊さんが写った100枚近くの写真が入っていた。
「この写真は、私が記憶喪失になる前の写真?」
私は写真を一枚ずつ軽く見ながら聞く。
「そう。全部君との思い出さ。最小限のものにしたんだけど、結局いっぱいになっちゃった。」
柊さんは笑顔を見せながらそう言う。私もその顔を見てなんとなく笑みを浮かべる。
写真を見ると、とても大切にされていたんだなということを実感した。
「これは?」
私は遊園地で撮ったと思われる私と柊さんの他に三人写った五人の写真を手に取る。
「これは仲の良かった友達だよ。この人は...」
それから、もらった写真を一枚ずつ教えてくれた。私は結構友達が多く、とても明るい人だったらしい。でもちょっとドジっ子で、よくミスをしては柊さんに助けてもらっていたことも聞いた。
沢山のことを聞けて「本当の私」を少しはしれた気がする。そしてなんとなく、昔の私が柊さんを好きになった理由がわかったよ。
私が一日で記憶がリセットされてしまっているとしたら、この会話はどれだけ繰り返されたのだろうか。どれだけ君を傷つけて、努力させてしまったのだろうか。
──君は優しすぎる。
だってそうでしょう?君が急に倒れるなんて、思っても見なかったもん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます