新商品のテスト

「しゃ……社長?」


 ざわざわと、普段と比べ皆が落ち着きがない。

 私を見てそうなっているようだが、なにかおかしいのだろうか。


「え~、みなさん。

 ……気持ちはとても良くわかります。わかりますが静かに。

 では、社長。 どうぞ」


 なぜか、急に副社長が困り顔になり、伝えづらいと言った感じで静粛を求めた。



「今私が着ているのは、次に我が社が発表する新商品です。

 当分は私が自ら着てテストしますので、皆さんよろしくお願いします」


 社員のみんなは未だ困惑が晴れていない。

 会社規模が小さくても、こんな風変わりなことは初めてだし、しょうがないか。



「新商品なのですか?

 でも、それって赤ちゃん用じゃ…」


「そうですね。

 でも、この商品は大人向け……らしいのです」


 副社長は何を言っているのだか。

 勧めてきたのは副社長なのに。


 私が今着ている物。

 それは赤と白のギンガムチェックと、くまさんのロンパースだった。



 くまさんは股間部に大きくプリントされており、アニメ調だ。


 仕事で使いやすいように、腹部に大きくポケットを設けてある。

 今はペンが二本と、おしゃぶりと、飴が数個ね。

 もちろんポケットにもくまさんは描かれている。


 ロンパースの中には紙オムツを当てており、トイレに行くこと無く仕事を継続できる。

 オムツとロンパースで柄を合わせるのは当然なので、こちらも当然くまさんだ。


 しかもロンパースなので、交換もボタンを外すだけで容易だ。





 ほら、大人向けそのものじゃない。

 黄色地の、ハチさんとはちみつのたくさんあしらわれたニーソックスだってばっちりだ。




「他にも哺乳瓶等も試されるそうですので、皆さん協力をお願いします」


 ……言ったっけ?

 そもそも私以外もオムツするの初めてのパターン……よっぽど幼少期の記憶なのかな。


「……えぇと、協力とは……」

「私達も、やるのですか?」


「いえ違いますよ。

 社長が求められた時に、お世話をするのだそうで……」



 困惑が晴れない様子。

 これも完全に初めてのパターン。


 

(おかしいわね……いつもならそろそろ夢が終わるのに……)


「社長、実際に試さないことには皆さんにお教えすることも……

 でも、本当にやるのですか?」



(あぁなるほど)


「わかったわ……ちょっとまって」



「……え?」

「まってって……まさか……?」

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