第2話 今はあの時と。

あの日、お父さんに将棋を教わった。だが新鮮であった将棋も今では馴れ馴れしい盤面になってしまった

今は奨励会に入り、プロ入りを目指している。奨励会はプロ入りの登竜門のようなものである

僕は奨励会で対局を始めようとしている

天井を目上げ、目を瞑ったが再び開き直し大きい声で言った

「よろしくお願いします‼︎」声は一斉に関東将棋会館を響き回った

相手は居飛車であり、昨日ネット将棋サイトでやった将棋と中盤までは同じ局面であった

だが数十手進むと相手は定跡を生きなり外してきた

終盤までは互角であったが終盤に入った途端、相手との実力差を感じた

それから数手進むと呆気なく3手詰めの局面までと持って行かれた

「参りました」僕の口から出た言葉はそれだけだった。感想戦何てする暇もなかった

涙をこらえた。涙なんて出したらプロを諦めたのと同じだと僕は思っていた

絶対にプロになってやる。いや、ならなければ僕に何があるんだ?

絶対に諦めない

今日の対局はこれで終わりだ。悔しくて心臓がカチ割れそうになった

2連敗という記録であった

もう夜だ。家に帰らなければ行けない

バックからゆっくりと“超難関5手詰め”と書かれた本を取り出し、電車の中でじっくりと解いた。2三桂馬、同角、2一歩成、同玉、2四銀まで

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