春風のイタズラ―11

「浅尾きゅんって……もしかして浅尾桔平君の友達!?」


 女神が詰め寄ってきて、おれらは唖然とする。いきなり詰め寄られたからやない。その美貌に圧倒されたわけでもない。

 何故なら……何故ならッ……女神の声が……めっちゃ低音ヴォイスやったからッッッ!


「リン、素が出てるよ」


 女神の友人A(♀)が窘める。その横の女神の友人B(♂)は、笑いをかみ殺していた。


「あ、ごめんごめん!実は俺、女装が趣味でさ。だからこの格好はあんま気にしないで」

「いや気にするわッ!なんや趣味て!」


 思わずツッコミを入れてしもた。ヒデはポカンと口を開けたままや。

 ちょ、待てよ。女神は女神ちゃうんか?もしかして股間にはおれと同じものがついとるんか?いやもしかすると、おれよりでかいのんが……って誰のが小さいねんッ!いやちゃうちゃう、あかん頭が混乱しとるで。ディープなブレスで落ち着けYO!YEAH!

 

「男の子だったんだぁーすっごく綺麗だねぇー!あ、日本画専攻1年の米田真帆でーす!ヨネって呼んでねぇー」


 ヨネは持ち前のコミュ力を発揮して、女神に笑いかける。


「俺はピアノ専攻1年の末延すえのぶ凛太郎だよ。で、ヨネたちは浅尾君の友達なの?」

「そうだよぉー!日本画1年では私達4人だけが現役生だからぁーなんかいつも固まってるんだよねぇー」

「へぇー現役生か!じゃあ1コ下なんだな。俺は1浪だから」

「そうなんだねぇー!リンちゃんは浅尾きゅんの知り合いなのぉ?」


 さすがやな、ヨネ。もうマブダチ感あるやんけ。こっちは女神が男神やったショックに打ちひしがれとるっちゅーに。

 こんなんアリか。末延凛太郎て。こないに美しいのに男やて。おれの運命は何やったん?あの電流は何やったん?


「……だから静電気だって言ったじゃん」


 ヒデがボソッと呟く。まるでおれの心を読んだかのように。なんや、その憐れむような目は。


「知り合いっつーか、会ったことあるんだよね、小学生の時に。エリサ・ラハティさんの誕生日パーティーに行ったんだよ。俺の父親が音楽講師やってて、その縁なんだけど。あ、ちょっと待って!塩サバ定食取ってくるから!」


 早口で言った後、女神……もとい、リンは慌ただしく立ち上がり、友人AとBもそれに続いた。


「リンちゃん、やっぱりピアノ専攻だったねぇーさすが一佐くんの洞察力だよぉ」

「せ、せやな……」

「でもぉー男の子だしぃ……一佐くんの彼女にはなれないねぇー!ざーんねーん!」

「ぐはぁっ!」


 魔法使いヨネの痛恨の一撃!勇者イッサは傷つき倒れた!


「……まぁ、あんなに綺麗な人が男性だとは思わないよね、普通は。仕方ないよ……」


 僧侶ヒデが回復の呪文を唱える。せやけど勇者イッサのハートはブロークン!YEAH!

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