第3話 転校生 ①
昨日来た転校生がおかしい。
僕がちょうど覚醒したタイミングで来たから、とても怪しいと思ったが、昨日一日何もなかった。確かに一日だけでその情報が周りに伝わってしまうかと考えたらそんな事は不可能な気がする。
「雪弥くん。お話があるんだ。」
僕の予想は合ってたようだ。
「昨日先生に、雪弥くんに学校を案内してもらいなさいって言われたんだけどいいかな。」
いや、全く予想と違っていた。でも必ず何かがあるはず。そこで絶対に尻尾を掴んでやる。
と思っていたが、既にもう最後の教室だった。
「ここが最後の教室、化学実験室だよ。授業でたまに実験するけど、多分今年はもうないかな。」
「そうなんだね。ここが化学実験室って事は薬品とかいっぱいあるの?」
「だね。知ってる限りでも結構な種類、危険なやつもあるし、あでも危険すぎるやつは担当の先生が管理しているよ。」
「へえ、じゃあさ。雪弥くんは覚醒者なの?」
「うん。」
あれ?今なんて?覚醒者って言ったか?
「覚醒して発現した悪魔は衰弱の悪魔モンドで合ってる?」
「そう。」
やはり、彼女は確実に覚醒者だ。何かしらの能力で質問を無意識に答えてしまう。
(ダメだ、モンド。バレたぞ。)
『やっとか、待ってた。』
モンドが出てくると同時に、幾世綾も悪魔を出した。
小さな少女の姿で悪魔には見えない。
「改めて自己紹介、私は幾世綾、言葉の悪魔ヘロの覚醒者。」
「ほう。名乗ってくれるのはありがたい。知ってるだろうが、俺は衰弱の悪魔モンドだよろしく。こいつは子分の泰花だ。」
「2人ともよろしく。この子はあまり人と話せないようだから質問されたらなんでも答える。私は敵としてここに来たわけじゃない。」
これが本心なのか。それとも嘘をついて隙を狙った巧みな戦術なのか。この舞台ではモンドが活躍しそうだ。
「そうか。じゃあまずだ。お前たちはどうやって俺のことを知った?」
「……始祖の悪魔よ。」
「始祖の悪魔?初めて聞いたが。」
「この子も始祖の悪魔は知らなかったみたい。始祖の悪魔はその名の通り、一番最初の悪魔達のことで、あなたやこの子を生み出したの。私が会ったのはその中の1人、運転手、通称ドライバーとか言う悪魔。やはり雰囲気が違ったわ。」
一息をおいてまた、モンドは質問を続ける。
「お前はどうやってそいつらに会ったんだ?」
「悪魔づてにね。」
「その悪魔は誰だ?」
「叡智の悪魔ソフィアに会った。」
「名前…はなんとなく聞いたことがある気がする。けどわからない…。」
「彼女の能力は記憶操作、その能力があなたに関わっていないといいわね。」
「何故だ?」
「始祖の悪魔を知っている彼女が、あなたを知らないわけがないでしょ?でも彼女はあなたの話は決してしなかった。何か隠していることがある。」
僕にも事情はわからないがただならぬことなのはわかる。
「あと、その始祖の悪魔から聞いた話は他にあるのか?」
「私は…始祖の悪魔に能力を使って質問をした、けど効かなかった。」
「じゃあどうやって?」
「始祖の悪魔は自ら衰弱の悪魔のことを話したのよ。」
「なんて?」
「奴が言ったのは“衰弱の悪魔が復活した。彼に会えば君の望みは叶うさ。”ってね。」
「お前の望みとは?」
「いや私と言うかこの子、ヘロの望み?かな。悪魔をこの世から完全に消すこと、みたいな、らしいよ。おかしいでしょ。」
「おかしくない…」
そうだ。おかしくない、モンドと同じ望みだ。
「え?でもなんで?この子は質問し続けたら答えてくれなくなっちゃったんだけど…。悪魔なのに人間だけの世界を作ろうとしてるって。」
「俺も同じだ。」
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