第16話天照
天照様のいる間には幾重にも結界が張られていて、それ以外にも目に見えて瘴気を放っているので常人では近づけない。
セバスと狂一と俺のみで、最奥まできた、これた状態だ。
窓をあけると神々しい巨石?が庭に飾られている様な部屋で、柔らかそうな椅子に体全体を預けて座る天照は、既に見た目的には黒い脈が全身に這う人間の形をした肉塊といってもいい造形に恐怖を感じるが、それを俺と狂一は絶対表に出さないようにしていた。
「セ・・・バス・・・・その・・・・人たちはだあれ?」
「鬼神衆 羅刹に配属されました。名を改め狂と申します」
「六条一輝です」
天照は俺を見るとにっこりと笑って言う。
「あれ?ととさま?とと様と同じ香りと気配・・・・・・・ううん、そっくりなんてものじゃなく、完全に同じ・・・・ととさま、私頑張ったよ。いっぱいいっぱい変わってあげて、痛くても痛くても守ってあげたんだ。もっともっと守ってあげたいけど、もう体も動かないし、体が石みたいでヒビがはいるの、最後にととさまにあえて嬉しいなぁ、でもおかしいなあ天にいるととさまがこんな場所にいるなんて、迎えにきてくれたの?」
天照の言うととさまが本当の父親なのか?それとも神話のイザナミなのか?もしくはそれ以上の全ての大いなる父の事なのかはわからないが、俺は思わず彼女に手を伸ばした。
「いけません!」
セバスの一言と同時に俺の触れようとした指先は黒い雷が拒否する様に、指先から全身に雷が流れる。
「瘴気の拒否反応です。うかつにふれられません」
俺はそれでも彼女に両手を伸ばした。
強力なスタンガンの様な?物凄いバチバチバチーンって音が部屋全体に広がる。
「一輝様!無理です!おやめください!このままでは瘴気に飲まれ貴方の体まで壊死してしまいますよ!!」
痛いいたいイタイ痛い、でも耐えられる、この子の今まで耐えて来た痛みに比べればなんてことはない。
そうなんて事はないのだ。
「自分が痛いだけなら、いくらでも我慢できる、いくらだって耐えられる。でもこんな子が痛みに耐え続けている姿を黙ってみてる方が、俺には「痛い」んだ」
黒ズミに半分犯されながらも、動けない彼女を抱きしめる。
「よくがんばったね。いっぱいいっぱい耐えたね。でももういいんだ。遅くなってごめんね、この痛みを取り除こう。」
治癒の力で黒ズミは綺麗な白に入れ替わっていく。
煌々として光と共に、少女は幼子の姿に綺麗に変わっていく、今までにない速さで癒しの力が広がり、瘴気が除去され、聖なる場所の様に浄化されていく。
治癒や浄化はこれでほとんどすんだが、このままでは同じことの繰り返しだ。
この子の受け継いだ業を、庭にある巨石に変る様に術式を変える。
天照家の庭に祀られている巨石は、神代から祀られているヒヒイロカネ、これに人の願望や痛みを肩代わりする権能や結界によるダメージの蓄積などをうつす
これによりこの子は痛みや色々な苦痛かわ解放される。
もう死ぬような危ない事はないと言いたいところだが、天照にどんな権能が他にあるかわからないから、いま出来る精一杯がこれである。
「とと様?もう痛くないよ?ととさまのおかげなの?と・・・と様、ずっとず~と待ってたんだよ。いつかいつかこの苦しみから解放してくれるって、助け出してくれるって、多くの人を守る為には私じゃなきゃダメな事だってわかってた。わかってたのに、痛くて苦しくて、でもし・・・・死ねなくて」
「もう君が死ぬ事はないよ。よく耐えたねもう大丈夫。これからは普通の生活を楽しめばいい」
俺が側にいる女中さんに天照を渡そうとすると、酷く抵抗した。
「いやぁああああ!ととさま!いかないで!いかないで!おいていかないで!」
「大丈夫どこにもいかない、でも汗はかいたからお風呂にいってきなさい。そしてもう少しすれば晩御飯も食べられるよ」
「おふろ・・・・にごはん」
今まで酷い状況だっただけに、食事も風呂も睡眠も満足にとる事はなかっただろう。
そういうと、天照は素直に女中につれられ奥に消えていった。
そこでやっと俺は一息思いっきり吐いた。
「ぶふうううううううううううううううううう、なんとかなったぜ!このやろう!!!」
「一輝殿!?怪我は!?なんともありませんか!?天照様は治癒されたようにみえましたが、どうなのでしょうか!?」
「傷や呪いなんかは全部取り攫いました。あの子の役割である願望や結界、痛みの代替わりなんかは、あの大岩、ヒヒイロカネに接続を変えたので、岩が駄目になったら代えればいいでしょう。まぁヒヒイロカネの大岩ですから、並大抵の事ではどうにもなりませんし、ここいらはヒヒイロカネの鉱脈もあるっぽいし、安泰でしょうな」
「なんと!なんという!ああっ一輝様!貴方のおかげであの子は救われました!このセバス!御三家と一輝様に永遠の忠誠を誓います!」
「天照の大きな役割を他に押し付けた訳で、あの子はあの子でまだ天照として他にも色々役割があるでしょう。完全に神格を譲渡する事は難しいですが、他に肩代わりさせる事くらいなら、なんとかできましたね。自分でもびっくりですけど」
今日だけで色々な治療をこなしてきた。
自分が出来る事でなんとなく安心して肩を落とした一輝だった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます