第15話鬼神衆
最初の予定していた治癒会場に場所を移し、一人一人丁寧に処置していく。
軽傷な者など一人もいなく、皆が重く酷い状態である。
それと同時に別の場所では食事が用意されていた。
急激な再生に肉体は枯渇するので、当然腹が減る、大量のエネルギーが必要になってくるのだが、その料理達がまた美味そうで困る。
酷く太っていた身とちては、そう簡単にばくばく食う訳にもいかないので食べれないのだが。
「本物だ!六条一輝の力は本物だ!俺の手!足が!」
「あああ、ある、本当に手足がある・・・・神よ」
「手足だけじゃねぇ!体のいたる所の痛みがねぇ!古傷の様な痛みもドン痛も何もない!」
「それでいて力が漲る!溢れる!四肢を失っても更に鍛えたはずの力が、前以上に膨れ上がる!」
「うぉ!何人か悟りを得て、位階が上昇してるぞ!」
座禅を組んで瞑想する人達、気づきを得て精神的に変化が訪れる、中には驚異的な強さを手に入れたり、今の段位から数段飛ばした上の段位に覚醒したりする。
骨格の矯正から筋肉の使い方、尋常では使用できない関節やその筋肉をバネの様な役割を与え、常人では不可能な肉体操作の戦闘が可能になる。
「確実に若返ってるぞ!」
「これな!治療所の話じゃねぇ!再生!?新生じゃねぇか!!!」
そんな彼らを見ながら、狂一とセバスが会話をしていた。
「御屋形様にここまで世話になっちまったが、やっぱり俺達はもどれねぇよセバス」
「私たちを襲撃しようとしたこと、悔やんでいるのか?」
「御屋形様をうたがっちまった。捨てられたと思った。誰がどう見ても戦える様じゃなかったのにな、それでも側に置いてほしかった」
「悪い事ではなかろうよ、そう思う事は」
「そして俺達元鬼神衆は最後の一線を越えた、これは明確な粛清対象だ」
「御屋形様はそれを許された。鬼神衆に戻るも、野に下るも好きにするがいいと、もしくは鬼神衆とは別部隊になるか?とも言われていた」
「別部隊?」
「六条一輝を守護する特選部隊、羅刹、御三家と違って自由に動くあの方に必要な部隊だ」
「若の為に戦えるのは悪くねぇな、でもそれじゃあけじめにならねぇんじゃねぇか?」
「狂一、御屋形様もまた限界に達しようとしていたのだ。もし今自分が死んだら?次代の天照は傷つき使い物にならなくなった者達をどう扱うだろうか?それこそ本当にただご苦労だったと放逐するのではないか?そう考えた天照様は今の内にと彼らの望むように出来るだけ配慮した結果だったのだ、決して捨てたのではない。天照様は日本の結界の要だ。テロで魔法戦になりどれだけの大魔法が使われても、建物の被害は最小限に人的被害はゼロ、スタンピードが起ころうが、異能者が暴れようが、異能者の集団と我らが戦おうが、日の本は天照様の結界に守られている。魔法を放てば都合がよく魔物だけが倒される。被害は対決している異能者同士だけが受け、一般人は完全に無傷。そんな結界にまもられている国が他にあるか?何を代償にすればそんな結界が張れる!?人間の命が千だの万だのでもそんな都合のいいもんは作れない。でも神が自ら代償を払うというなら?神が人々の痛みを肩代わりするというのなら?・・・・・・可能だったのだ。そして死ねば次代の天照が顕現し、日の本を守る。今の天照様のお姿は?もう・・・・・もう人としての原型を留めてはいない、本来なら代替わりする。つまりもう亡くなってもおかしくないのだが、次代にこの呪いを継承する事、この辛さを後のよに残さなければいけない残響の念から、今だ耐えられておられるのだ」
その話に絶句する狂一。
多くの者がこの事を知らない上に、姿さえ見る事がない天照、ダンジョン発生に滅亡危機に瀕していた日本を立て直した神代御三家の頂点、天照。
神話の力を二代目に継承する為に、現天照の命は終わろうとしていた。
治療の休憩中にそっと近づいて聞いてしまった場違いな俺、嫌、むしろセバスは普通に喋っていたから周りにいた人たちは結構普通に話が耳に入っていた。
もう隠すも何もないといった状況なのだろうか?
場違いなのにも関わらず、俺が見てみましょうか?なんて軽口をいってしまうと。
「本当ですか!?天照様を見ていただけますか!?」
「うぇぇ!?でもそれって凄い病気かなんかなんでしょ?俺で如何にかなるかなんてわかりませんよ!?」
「今!この世界に!貴方以上の治癒師!解呪の出来る人間が他にいるわけがない!・・・・・天照様は治癒を望んではおられなのです。これは全て私の独断と我がままでおこなっています。あの子はまだ幼い子なのです!天照になり!強制的に精神が成長しただけで、本来ならまだまだ幼子なのです!!世の中の事を何一つ知らない、都会に憧れ、アイドルに憧れ、洋服や可愛い宝石に目をキラキラさせるような、まだまだまだまだまだ幼子なのです!!代償が必要なら我が身を捧げます!いくらでも使えばいい!あの子を・・・・・・あのまだ幼いあの子をすくってくださるなら・・・・・・鬼神衆が十王の一人、冥王セバス・バルバドス!二君に仕えると世界に笑われようとも!六条一輝様に忠誠を誓います!何卒あの子をお救い下さい!!!」
涙ながらに無我夢中で体全身を使って爆発する感情を表現するセバス、まるで壊れたかの様に鬼神衆の中でも十人の猛者の一人が頭を地面にこすりつけ懇願する。
病気と言うより、何かの代償を支払った結果、肉体にダメージが反動で帰ってくると言うのなら、これは治癒の領域の話なのだろうか?
セバスさんを立ち上がらせて、俺に出来る事なら全力でやりますよ。
そういって強がって笑って見せるのが今の限界だった。
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