第9話二代目上杉謙信 二代目武田信玄

 かかってこいの挑発に余裕の表情を見せる者もいれば、面白がって喜ぶもの、苦い顔する者それぞれの反応がみれた。 

 

 「一輝、源氏も条家も全部的に回す気か?俺達に上納金を払う事で生き残っていた六条家が」 

 

 「父さんの商売も、母さんの商売も独立しているし、俺の治癒だけでも事情は変わってくる。ダンジョン発生から300年、世界的に日本は未だにダンジョン後進国なのはなぜだ。世界でも数人のSSSランカーを一人は確保しているのに、ダンジョンから恩恵を受けているよりも未だにダメージを負っている、嫌負っていたかな?それがやっと事情が変わったのが、ここ50年での話だ。天照家、月詠家、素戔嗚家の神々の二代目、神代御三家が日本と日本海域に結界を張り、発見されず放置されてスタンピードが暴発したり、ゲート型ダンジョンからの魔物を押さえつける事が可能になってから、国内は安定し始めた。異能者や階位の上がった超人的冒険者同士の争い、犯罪、テロ、これらを押さえつけ、日本の法律に従わせることが可能になったのも、御三家のおかげだ。これにより日本は250年の高度混乱期を乗り越えた。だがそれまでの間に何人の善意ある冒険者ランカーを失ったと思う?彼らは秩序ある日本を取り戻すために、死物狂いで犯罪者やテロリストから日本を守った。その結果安定を手に入れたがその代償は彼らの戦線離脱を意味した。ダンジョンに潜る前から人間同士で争って、もうボロボロだ。今じゃ協会の理事や武館の学長、政府の顧問に納まった人も多い、そういった意味では報われたのかもしれない。今日このPTにも何人かいるんじゃないか?引退を余儀なくされた人間が?」 

 

 「それがお前にな・・・・ん・・・・・まさか!?ふぇへへ、いくらなんでも、いくらてめぇが治癒に目覚めたからってそんな事出来るわけがねぇ!!審判教の聖女や聖人ですら前線に復帰させるのは不可能だったんだ!ヴァチカンの聖女や聖堂教会の聖女ですら無理だったんだぜぇ!それを昨日今日治癒に目覚めたお前が治せるっていうのかよぉ!!!一輝!!!」 

 

 「さあ?出来ないとはいわないが、治療もただじゃないしな、客が入れは治療しないでもないって話さ」 

 

 「ちっニアお嬢様を治療したからってふかしやがって!口だけじゃね~か!!」 

 

 そんなやりとりをしていると、何人かが俺と藤虎に近づいてくる。 

 

 「今の話が本当なら是非、治療してほしいと私は思います」 

 

 白と黒の髪が入り混じったホワイトタイガーを連想させる女性。 

 

 「私はギルド毘沙門天の二代目上杉謙信、上杉シオンといいます。私は5年前の大災害で両手を失いました。今は魔動義手です。傷は閉じ如何なる治癒も再生の様に生やす事は不可能といわれています。貴方にこれが治せますか?」 

 

 「おっと上杉の嬢ちゃん抜け駆けはずるいぜ、俺は風林火山の二代目武田信玄、30代に見えるかもしれねぇがこれでも80になる。動乱期の傷や呪病を山ほど背負っててな、それでもまともに動けるのは、山の如しって金剛スキルのおかげだ。義手義足は当たり前、魔力や気力の通りなんかも全盛期の10分の1だ。俺の様に前線を離れなきゃいけなくなったが、レベルのおかげで寿命だけは300だ500だとたっぷり長生きできる奴らは多い、もしお前が治せるなら俺達はまた最前線のダンジョン最深部に潜れる上に、完璧な状態で国防にも参加できるわけだが、どうだ?できるか?」 

 

 俺はにやっといやらしい顔をして答えた。 

 

 「お代はいかほどいただけるんで?」 

 

 「報酬はもちろん、お前ら六条家、これから戦争すんなら兵隊が必要だろ?いっとくが俺達が全開すれば国内にかなう人間なんてそうそういねぇぞ」 

 

 「毘沙門天も同じく、信玄叔父様程じゃないにしろ。ダンジョンにもそれ以外の戦闘でもお手伝いできます!」 

 

 「お代としては十分ですね。もちろん基本の金銭もいただきますから」 

 

 「金でいいならいくらでもはらうわい」 

 

 「同じく」 

 

 「じゃあまずシオンさんの両手から治しますか」 

 

 シオンを水の球体にいれると、義手を外し、塞がった先の部分を綺麗な状態にして再生を促進させると、緑色に光り手がみるみる再生されていく。 

 

 「おいおいおいおい!!!まじかよ!」 

 

 「なんだこれ、ほんとうなのか!?」 

 

 「冗談だろ!?」 

 

 「これはやばいことになるぞ!」 

 

 「すげぇ!」 

 

 「なんつうはやさだ!」 

 

 「おい、六条の坊主」 

 

 「一輝ってよんでください」 

 

 「一輝よ、副作用なんかあるわけじゃないだろうな?もしくは新たな技術の実験台にでもしてるわけじゃないだろうな?」 

 

 「副作用って要は不具合でしょ?治療して別の問題あったら意味ないじゃないですか。問題ないです」 

 

 水球から出て来ると、自分の手である事、つなぎ目の見た目や違和感がないかと確認する。 

 

 「なんの違和感もない私の手、腕、素晴らしい!素晴らしすぎる!ありがとう一輝殿」 

 

 「おっとつぎは儂じゃ」 

 

 信玄の方は両足に肩から手先にかけて、そしてもう一つの腕は指が数本、筋肉の調整から骨格、魔力、気力の調整、下丹田内での魔力と気力の融合を確認。 

 

 30分程で出て来ると、巨漢だった男が180くらいの引き締まった美丈夫になって出て来た。 

 

 「見た目が違うぞ!どういうことだ?」 

 

 「魔力が正常にながれ、気力も気道を確保した結果、余分に流れて歪んでいた部分が正常になったので、以前の一部筋肉の膨張や顔の変形なんかも治療しました。多分20代前半の頃の信玄さんの見た目と変わってないはずです。」 

 

 「本当だ。わけぇころの儂じゃな、しかも全盛期よりも力が溢れ出る!一輝!もしかして儂は魔法もつかえるんじゃないか?」 

 

 「使えますよ、その為に魔脈の再建もしたんですから、ああでも無理に気と融合させないで訓練してからにした方がいいですよ。下手にやったら暴発しますからね」 

 

 「気功も全盛期以上で以前は憧れた魔力まで仕える!その上に、更に上に気魔力、魔気か?どっちでもいいか!?更に上の段階の力まで覚醒したのか!?こりゃすげぇ!今ならSSやSSSともやりあえるな!こいつは本物だ!」 

 

 藤虎が愕然として俺を見る。 

 

 「嘘だ、こんなの、治癒に目覚めて・・・・源氏も・・・・・浄家も裏切るだと・・・・・・そんな事が許されるはずはねぇ!?ころも!あまね!お前ら黙ってていいのかよ!?」 

 

 「う~ん・・・・ぶちゃっけ本家は黙ってないと思う。それはごめんね?でもあまね個人としては一輝くんと敵対したくないかな?なんて?」 

 

 「ころもも同意なのです。でも綾香おばさまの件もあるので老人たちは黙ってないでしょう。愚かな事です。一輝気を付けるのですよ」 

 

 「てめぇら!それでいいのかよ!久我の娘に一条の娘だろうが!!」 

 

 「藤虎あんたとことん馬鹿ね!上納金だ本家がどうだよりも、一輝君の力目の前でみて偉大さ感じないなんていかれてるわ」 

 

 「どう考えても敵対なんてしたくないです。本家は説得しますがとまらないでしょう。それでもあまね個人とは友好的であってほしいです」 

 

 「だよねぇ、それしかないよねぇ」 

 

 こうしてエルドラドのパーティーでのデモンストレーションは終わった。 

 

 依頼がいっぱいくればいいなぁ、なんて軽く考えていたが予想以上に忙しくなってくるとは思わなかった。

 

 

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