第10話
「アニーサ、旅支度の準備を頼む」
ブレイブに言われたアニーサは頷き、サーラ達とすぐに賢者の間を出ていった。
残ったのはリアンとブレイブだけだ。
「貴重な資金をあいつらにやって大丈夫なのか?」
「俺達は外の世界をよく知らない。ましてやこの風貌だ。すぐに獣人と分かる。俺達が調べるより外の人間が調べた方がより詳しい情報を手に入れられるだろう」
それに、とブレイブは言う。
「お姫さん達がどこまで本気なのか知りたい」
まだ納得していなさそうなリアンに、ブレイブは苦笑を浮かべる。
「資金は俺の個人的な金だ。それなら文句は無いんだろう?」
*
アニーサとブレイブがすぐに旅支度の用意を済ませてくれたので、サンスクリットはその日の夜に発つことが出来そうだった。
「サンスクリット、貴方には酷な役目を負わせてしまうわね」
これから色々と大変だろうと想像をすると、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになる。
そんなサーラの気持ちを感じ取ったのか、サンスクリットは笑顔を浮かべた。
「良いのですよ、私の主人はサーラ様です。何なりとお申し付けください」
「ありがとう」
「家臣に対して命を下すとき、申し訳なさそうにするのはお母様譲りですね」
サーラはサンスクリットを見た。彼はサーラに仕える前、亡くなった母に仕えていたという。
「お母様はどんな人だった?」
赤子の頃にはもうこの世に居なかった母。3年前に亡くなった乳母とサンスクリットが親代わりでサーラを育ててくれた。時折、サンスクリットは母の話をぽつりとする事があるが、詳しい事はいつも聞かなかった。
「サーシャ様は……踊りが大好きでいつも笑顔でいた方でした。そして、とてもお優しい」
懐かしそうにサンスクリットは話した。
「サーシャ様にとって王宮での暮らしは性に合わなかったようでして、何度か街にお忍びで遊びに行く手伝いをさせられていました」
サーラはクスクスと笑う。母の顔を知らないが、サンスクリットを振り回している様子は自然と想像がついた。
「……まだ話したい所ですが、そろそろ時間がきたようです」
「そうね。サンスクリット、頼んだわ」
「サーラ様の仰せのままに」
サンスクリットは指笛を吹いた。すると、森の方から1羽の大きなワシミミズクが現れた。ワシミミズクは慣れた様子でサンスクリットの肩にとまる。
「久しぶりね、キアラ」
サーラはワシミミズクのキアラを撫でると、うっとりとした様子で目を閉じた。
「何かあればキアラで文をお届けします」
「分かったわ、サンスクリットもキアラも気をつけてね」
軽く一礼をすると、サンスクリットはすぐに闇夜へと消えていった。
サーラはしばらく暗い闇を見つめていた。
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