第5話 魔導と領民

 魔導士は基本的に一人で完結している。衣食住や環境すらも魔法で簡単に解決できてしまう。家を作る魔法、麦を育てる魔法、衣類を紡ぐ錬金術、住みやすい気温にする魔道具などなど、魔導士は魔法と向き合うだけで自己完結できるのである。

 それ故に他者に興味を持たないものが多かった。魔法を使えない人々がどんなに苦労しようと、争おうと、無関心であったのだ。


 そんな中他の魔導士よりも少し優しく、荒れに荒れた人々を憐れんだ者がいた。その者が魔導士たちをまとめそれぞれの地域を安定させようと提案した。領地として地域を割り振り、せめて担当地域の争いや飢餓くらいは解消しようという誓いを建てたのが魔導王国の始まりである。


 当時の魔導士たちも人々が無駄に死ぬ様子は流石に可哀そう(小動物が大量死しちゃう感覚)と思っていたらしく、まとめ役を現王家が続けるなら協力するということになったそうだ。人望あったんだね。管理領地の広さで爵位を渡され、それが今に続いている。


 魔導士たちは自分たちの事は自分たちで出来てしまうため、基本的に地位や名誉、金銭などに関心がない。関心があるのは魔導のみ。税などは基本的にいらないのだが、実際に町や村などの管理補助をしている領民たちの給料を払うために最低限徴収している。領民たちが治安維持や地域安定のために公共事業をしたいと申し出てきた時は臨時増税を認めたり、魔法で補助したりもする。



 僕が自主的に魔法で道を作るという行為は、魔導王国の歴史を見てもかなり稀な行為である。だけど異界史を読んで思ったことは、魔法を使えない人々にとって道は生活の基礎に繋がるということだ。交流しやすいことはいい事だからね。


 そのまま屋敷まで道を作りながら帰ると、領主である父に呆れ半分面白半分の目で見られた。「まったく。お前は変わってないな。」と言われたが、景観的には綺麗になったからこれはこれでいいか、と許してもらえた。魔導士は興味のない事には軽いのである。


「父上、ついでに領地の道も全部舗装しなおしていいですか?そっちの方が綺麗だと思うんですが。」


 一応確認を取っておく。おそらくお前がやりたいなら勝手にやっていいよというだろう。


「なんでそんなことに時間を使うか分からんが、お前がやりたいなら勝手にやっていいだろう。」


 ほらね?やったぜ。許可が貰えた。


「その前に家族に挨拶していきなさい。みんなお前を心配してたんだ。貴族学校で浮いてるんじゃないかってな。」


 うっ。確かに最初の頃に浮いてたから「そんなことないよ!」とは言えなかった。

 でも長期休暇前になると、魔導貴族たちとは別方向で注目されて色んな研究をしている先生たちや面白がった子たちと仲良くなり始めた。その辺も話して家族には安心してもらおう。


「はい。今日はゆっくりしたいと思います。父上たちにも学校での話をさせてください。」


「夕食でも食べながら聴こう。楽しみにしておくよ。」



 久々の実家だ。今日はゆっくりして、明日からとりあえず道づくりをしていこう!

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Industrialize Sorcery 矢口羊 @HitsujikusaiSato

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