第4話 長期休暇の始まり

 僕たちの通う貴族学校は年始を少し過ぎた頃から始まる。春を終え気温が高まってきた辺りで長期の休暇となる。気温が落ち着いてきた秋口に再び学校に行く人もいれば、そのまま年始まで領地で過ごす人もいる。僕はどうしようかな。


 長期休暇に入る少し前に伯爵であり領主である父に手紙を送った。

 夏から始まる長期休暇の際に領民を借りて領地内に特別開発地域を作って指揮させてほしいといった内容だ。父上たちにしてみれば領民のために何かしたいなどという無意味な思想は貴族学校に行けば薄れるだろうと思っていたのだろうけど、より強力になって帰ってくるのである。びっくりだよね。


 父上にしてみても「それで領地がちょっとでも豊かになるならまぁいいか、期待してないけど。」的な緩い感じで許可を出してくれた。ついでに何を学んでいるのかなども聞いてきたので、異界史を紹介しておいた。



 僕の影響で異界史を読み始めた先生も何名かいるようで、それをきっかけにずいぶんと仲良くなった。秋口の学校には来るのか聞かれ、夏から自領で異界史を参考にして開拓をするから秋に来れるかわからない事を伝えた。するとどの先生も実地実験できる事をものすごく羨ましそうにしていた。やはり貴族学校の先生は研究者なんだなぁ。



 そういえばアメリアさんにも同じことを聞かれたなぁ。先生たちに伝えたことと同じことを言うと、来年まで会えないのは長すぎるからどこかのタイミングでこちらの領地に遊びに行くと言われた。「歓迎するよ!」とは言ったものの、長すぎるってなんだろう?



 魔導貴族を目指している成績上位の子達はみんな秋口になったら学園に戻って来るらしい。流石だね。領地でも魔法漬けの生活を送ってくるんだろうなぁ。



 そんなこんなで待ちに待った長期休暇に入ると、僕は急いで領地に帰った。うちの領地に入ると今まで気にも留めなかった道の出来に目がいった。王都からここまでの道もそうだったけど、街道の整備がかなり雑だ。

 元々魔導士は飛べるし、何かの行事の時くらいしか道を使わないから関心がないのだろうけど・・・これじゃ人や物の流れは滞っちゃうよね。


 というわけで、馬車に揺られて暇なので貴族学校で覚えてきた道路敷設魔法を使って領都までの道を作っていく。道のタイプは領民でも整備できるローマ式。層の構造で水はけもよくしていく。その辺の素材を魔法で変換するだけなので、さほど魔力は使わない。馬車の動きに合わせてちょっと先を道に変えていく。それだけで馬車の動きがかなりスムーズになった。浮いてなくてもお尻が痛くなくなった。


 因みに道路敷設魔法は異界史のローマ時代を読んでいた時、これなら簡単に出来そうだなと思い付きで魔法を作ってみたらほんとに簡単に出来たものだ。オリジナル魔法だよ!(今のところ需要はない)


 途中で通過した村や町の主要道路も魔法で作り替えながら進んだ。珍しいうえにとても移動しやすいらしく住人たちはすごく喜んでいた。道が変わるだけでもこんなに違うんだよね。いつも飛んでる魔導士には分からない事だ。興が乗った僕は領内の領都につながる道を全部変えちゃおうと計画するのだった。



 長期休暇中にやりたいこと:道の敷設、領民主導の開拓

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