17 恭◇お早う/祖父□夢みたい
私が起きると、お
「……?」
心なしか、お祖母様は泣きそうな
それから「お早う」って、二人は言ったの。
起き上がり見回すと、私の部屋でした。
「どうして、ここに居るの?」
私は首を傾げます。すると、なぜか二人は顔を見合わせる。
「恭ちゃんが、酷い風邪引いちゃったのよ。覚えてない?」と、お祖母様。
お祖父様の方は「うんうん」って頷いている。
……あれ? そうだっけ?
でも、他に思い当たる理由も無いし、私は「そうなんだ…」って返したの。
風邪っていう割には、身体は軽かったけれど。腑に落ちないまま、私は曖昧に笑って見せました。
と、突然お祖母様が私の顔に手を近付けてきたの!
びっくりして、思わず手で顔を覆ってしまって…
「ん?」
お祖母様の手が、私の横の方の髪を触っている。何してるのかな…?
柔らかくて、ほんのり温かい手が、私の髪を優しく
「これ…」
「ふふ、恭ちゃんにあげる。おじいちゃんが作ってくれたのよ」
お祖母様に手鏡を渡される。
そこには…金属の
「わあ! 綺麗!」
なぜか、また、二人は
すぐに、気にならなくなりました。
「ありがとうございます!」
改めて、お祖父様の手を握って言うと、お祖父様は「良かった」って。
そして…
「おじいちゃん特製だから、絶対に無くしちゃ駄目だよ」と、微笑んだ。
「うん!」
□ ■ □ ■ □
恭に、もう少し寝ていなさいと言い残し、私と妻は普段あまり使っていない部屋に入った。今、私達の寝室には
「あの反応だと、恭…瞳の事、判ってなさそうだな」
先程の髪留めを即急に作り、渡したのには、二つの理由があった。
ひとつ。片目の色が変わった事について、彼女自身がどう反応するのかを見たかったから。鏡で顔を見せる切っ掛けを作りたかったのだ。
もうひとつ。〝今の恭〟は言ってしまえば〝鉱物〟で出来ている。その為、
妻が遠くの方を見ながら小さく頷き、ぽつりと言った。
「恭ちゃんが戻って来てくれたなんて、嘘みたい…」
「ああ」
「…」
「お前はこんな夢みたいな事…信じてくれるのか?」
不安で咄嗟に出た私の
「夢みたい…ねえ。私は夢でも良いですよ。夢の中の物語はどんなに楽しくても、どんなに辛くても必ず目覚めて消えてしまう。
もし、その夢が自分にとって幸せな内容で、少しでも長く見続けられるのなら…私は、恭ちゃんが居るこの世界に、居られるだけ居たいです」
詩を朗読するようにゆっくり響く温かい声。愛する妻の、心からの肯定だった。
私達は手を取り合う。少し骨張ってきた妻の手は温かかった。私は壊れ物に触れるみたいに、両手で優しく包み込んだ。
妻が私の目を見る。
私達は…いいえ。
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