第23話 ミッション5:学年一位ノ美少女ヘノ告白ヲ阻止セヨ 《達成度10%》
お知らせ
カクヨムwebコンテストへの参加ですが、多忙により規定日までに10万字の投稿が難しいと判断したため、参加を辞退させていただきます。今まで応援してくださった読者様には、このような形になってしまい本当に申し訳ございません。合わせて、拙作を応援してくださり本当にありがとうございました。また機会がありましたら、カクヨムコンまたは別のコンテストにも応募してみようと思います。よろしくお願いいたします。
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「つまり、ひめちゃんを何も知らない一年生は、ひめちゃんのことを未だに高嶺の花と勘違いしがちなのだ」
「天束さんは高嶺の花だろ」
事情を聞いた鳥羽さんも天束さんの机に合流し、湊にあらましを聞いてなんとなく理解できた。
天束さんは、入学してからこれまでに約三十回以上も男から告白されているらしい。それだけでも異次元の人なのだが、性格上の問題でいろいろ面倒な事態が起こってしまうのだとか。
「ひめちゃんは内気で断れない性格だから、相手が誰であろうとOKしちゃってね〜。みなたちが介入するまでは何股も掛け持ちしたせいで一回だけ修羅場になった時があったの」
「あの時は血湧き肉躍るガチものの修羅場だったね」
「あの時はあたし軽くトラウマ」
い、一体何があったんだ……
「だから、みなたちの仕事は断れないひめちゃんのかわりに勘違いボウズくんたちに現実を教えてあげること」
「言い方よ」
「そして新メンバーのキミにはその仕事内容を覚えてもらうよ。あっ覚えるって言っても、ウチラは人手不足だから初日から実践してもらいます!」
バイト感覚でそんな面倒な仕事押し付けるなよ。
「でもなにすればいいんだ?男の僕が躍り出たらそれこそ修羅場だろ」
「うーん、ひめちゃんの彼氏とでも言えば?」
「余計ややこしくなるでしょ」
素早くツッコんでくれた鳥羽さん。まったくもってその通りだ。
「ふざけんな僕なんかが四十八億年早いわ」
「なんで食い気味に否定するの?」
「さ、三人は傍観してくれるだけでいいよ」
「「「え?」」」
天束さん、今なんて言った?
「ひめちゃん、それって……」
「あたし、今日こそ断ろうと思う」
「「……っ!!!!!」」
キリッとした天束さんの決意に、鳥羽さんと湊は揃って目を丸くした。
「みなちゃんと鳥羽ちゃんには言ってなかったけど、あたし今月で七回は告られたんだ」
なななな七回!?!?!?
「天束さんってやっぱレベチだわ」
「言ってくれなかったの!?」
「なんで言わなかったの?」
「わ、悪いなと思っちゃって」
「そんな!みなは迷惑だなんて思ってないよ!」
「私も同感」
「あっ、あと、自分ひとりで断りたかったってのもあるから」
天束さん、やっぱり変わりたいんだな。でもその七回はどうやって回避したのだろうか?
「じゃあどうやって切り抜けたの?」
僕より先に鳥羽さんが恐る恐る聞いてくれた。となりの湊は顔が真っ青になっている。
「まさか、また七股……」
「それは回避したけど、余計ややこしくなっちゃった」
「ややこしくなった?」
「毎回何も言えずに固まったり、きょどりまくった挙句卒倒しちゃって、告ってきた相手に保健室に運ばれるオチ。でもそのせいで、一年の間であたしは病弱、幸薄、薄命だとか噂が立つようになって、キミを救いたいっていう人からますます告られるようになったの」
「ややこしくなっちゃった」
「ややこしくなってるね」
ややこしくなってんな。
「だから今日こそ断ろうと思う。あと噂を真っ向から否定したい」
天束さんがいつになくやる気だな。イメチェンした影響か?
「あたしはみんなが思うほど高嶺の花じゃなくて、奈落の底にクソほど生え散らかすウルシだよって」
「それは自分を下に見すぎだよ」
湊の意見に僕も同意する。
「と、とにかく断りたいからみんなにはみ、みみみみみみみみみみッ!!!」
天束さんがバグった。言い出したくても恥ずかしくて口に出せないのか。こういうところはいつもと変わんないな。本当に断れるのだろうか?
「見守って欲しいって事だね!それならどんとこいだよ!ひめちゃん!」
「もちろん、ひめの力になるなら」
ブンブンと顔も見えないほど激しく頷いてるので正解なんだろう。
「よっちゃんは?」
「と、友達だし?当然僕も手伝うよ」
「ああああありがとう……!」
て、照れながらの笑顔──ッ!うっ、眩しい!!
「その男の子はいつ?」
「さっきすれ違いざまに手紙を渡されてね。今日の放課後、C棟の化学室前に来て欲しいって」
すれ違いざまって渡し方特殊すぎんか?もっと靴箱にぶち込むとかあっただろ。
それよりC棟か。この学校は屋上も立ち入り禁止だし告白スポットと言える場所もそんなにないが、ナイスな場所選びだな。
中宮高校には三つの校舎があって、そのうち正門にほど近く教室が密集しているのがA棟、職員室や家庭科みたいな専門教室があるのがB棟なんだが、C棟は学校でもちょっと離れた場所に位置し、あるのも化学室や視聴覚室、各教科の準備室くらいで、文化祭以外の日は人気も少ない。告白するには絶好の場所ではあるが。
「大丈夫か?あそこ僕らが隠れるとこあんまないぞ?」
「廊下がほぼ一直線だからね、化学室の前だと最奥だし」
化学室はC棟の最上階である三階の左最奥端に位置する。三階には曲がり角がB棟へ続く連絡通路のひとつしかなく、その通路は右最奥端から接続している。さらに教室も使用時以外は鍵が掛かっているため、生徒は先生に許可を貰わないと当然入れない。困ったな、誰もいないから声は響くだろうが、遠すぎるせいで天束さんの安心材料にはなれなさそうだ。
「せ、先生から手近な教室の鍵借りてくる!」
「おいまて湊、口実はなんだ」
「そんなのテキトーでいいよ!理由次第ではどうせ先生も見に来ないし!」
いやいや適当な理由付けてもバレるだけだろ!この学校の先生たちは軒並み感が鋭い人が多いからな、湊なんて「貸してくださーい!」って言っただけで良からぬことを考えてるのがバレそうだな。
「そ、そんな手間かけなくていいよ」
「でもひめちゃん!」
「あたしは、み、見ていてくれるだけで安心できるし、みんながこの髪型褒めてくれたから、勇気出る、かも」
自分の言ったことにはにかむ天束さん。恥ずかし気にポニーテールを弄る姿は僕を含め鳥羽さんも湊も悶絶してしまった。
「大丈夫?」
「「「うん平気////////」」」
でもそうだな。可愛い子には旅をさせよっていうしな。天束さんも洞窟の一件で甘やかされるのは気が引けるのだろう。
「じゃあ頑張ろうね!応援してるよ!ひめちゃん!」
「私も」
「僕も」
「あ、ありがとう」
なんだか独り立ちする子供を見守る親のような気分だ。と、あっという間に休み時間が終わり、チャイムが鳴った。やべっ、教科書用意してない。
*
決意表明したはいいけど、僕はやっぱり天束さんのことが気が気じゃない。
世界史の授業。いつもの天束さんは寝首を掻かれそうなくらい爆睡してるのだが、今日は緊張で眠れないのだろう。机の下でブルブル震えた指でスマホを触っている。こういう時も勉強したくないんだな。
心配すぎて授業に集中できないので、僕は天束さんの肩に指をつつく。
「っ!?!?!?!?」
授業中だし配慮したのだろうが、天束さんは森の中で巨大熊に遭遇したように仰天した。絶叫も漏れかけてたな。
「ご、ごめん。天束さん、大丈夫?」
「……正直、自信ない」
その途端、天束さんは毒を盛られたかのように頭を押さえて悶絶した。
「どしたの!?」
「ふ、フラッシュバックが……」
陰キャならよくある関連単語を無意識に発した途端、黒歴史がフラッシュバックするこの現象。そろそろ誰かが名称つけてもいいと思う。
「何かあるのかな?そのせいで自信ないの?」
「わ、わかんない」
「良ければ聞かせてくれないかな。話すだけでもスッキリすることあるかもよ」
天束さんは顔をキョロキョロさせてなにか考えてるみたい。
「……」
よっぽど他人に話したくない黒歴史なのだろうか。口元が揺れている。
「ところでスマホで何見てんの?」
「気分を落ち着かせるために刑事ドラマの現場検証シーンネットで漁ってるんだけど、ネットだといまいちリアリティが沸かないんだ」
「特殊な落ち着かせ方だね」
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