第21話 緊急ミッション:人気ノ女子グループト黒歴史ヲ共有セヨ 《達成度20%》
『(僕)僕もエグいの一個あるんだけど、最後にいいかな?』
『(湊)最後ね』
『(鳥羽さん)これで最後なら』
湊と鳥羽さんも黒歴史を共有しまくったことで疲弊してるらしい。
『(僕)小学五年の頃だったかな、そこらへんから男女別々で着替えるようになるじゃん?ある日、男子と女子で別の場所で体育の授業やってて、終わるのもバラバラだった時があったんだけど、体育館の更衣室が工事中で、着替えの場所が男女とも同じ教室だったんだよ。そんで早く終わった男子が先に着替えることになったんだが』
女子の前で話すのキツゥ。でも天束さんは期待している、僕は先に行くぞ!
『(僕)僕はそん時腹が死ぬほど痛くて、みんなより早めに着替え終わると真っ先にトイレに籠ったんだ。それも教室から少し離れた図書室の近くにあるトイレに。そこで数分くらい格闘した後、スッキリしながら教室に入ったら……』
『(湊)たら……?』
『(僕)女子が着替えてた』
引かれたやろ。叫んでいいか?
『(僕)僕はスッキリしてたせいで頭の中空っぽになってたんだ。それで廊下にクラスの男子が密集していることに気づけなかった。僕は女子の悲鳴が聞こえたと同時に現状を把握し、大急ぎで廊下に出た。そしたら廊下にいた男子から、「お前やったな」と驚かれました』
実際には驚かれ半分尊敬半分のまなざしだったけどな。
『(湊)そんなことあったね。みなも友達から聞いた』
『(僕)湊は別のクラスだったから知らないだろうけど、ぶっちゃけどうだった?』
『(湊)よっちゃんのクラスのことはわからないけど、みなはその話聞いた時爆笑したよ』
『(僕)そ、そっか』
その後教室に入った僕は、気まずすぎて男子にすら一言も話せなかった。どうすればよかったんだよ!みんなの前で謝罪しろってか?それで女子にチクられるんじゃないかってめっちゃびくびくしてた。結局されなかったけど、心なしかその日から、僕を見ている女子たちの目の色が一変したような気もしたし。
こんなこと女子に話してよかったのか不安になってきた。湊はまだしも天束さんと鳥羽さんは引いてないよな……
『(湊)改めてだけど、黒歴史暴露する時だけよっちゃんとひめちゃんめっちゃLAIN早くなるのなんで?』
『(僕)当たり前だろ、僕らの記憶容量の八割は黒歴史だぞ』
『(ひめちゃん)あたしなんかまだ高校生編話せてない!!』
『(鳥羽さん)もういいよひめ』
あぁもう死にたい。暴露するだけで死にたい。僕は補足とばかりに隣の天束さんに小声で告げる。
「天束さん、これ大事なのは人生でトップクラスの黒歴史だと感じるものでも、他人はあんまりそう思わないってことだよ。僕のはえぐかったけど、湊のヤツとか僕からしてみれば黒歴史でも何でもないからね」
たった今見繕ったアドバイスだから、参考になるかと言ったら疑問だが……
あれ?天束さんがニヤついてる?
「うん、ありがとう」
なお、暴露会のメンツで湊だけが先生に見つかり、クラス中に晒し上げられるという新たな黒歴史を刻みこんでいた。
*
放課後、僕は一足早く教室を出て昇降口で天束さんを待っていた。天束さんは先生の呼び出しで職員室に行った。まだ時間かかるのかな。
「やっほーよっちゃん!」
声をかけてきたのは湊だった。日本史の授業の途中で職員室に連行されていたが、天束さんと入れ違いで反省文を書き終えたようだ。
「おつかれ、随分早いな」
「ウチの先生ちょろいから心から反省してます!ってカンジ出しとけば枚数減らしてくれるんだよね」
セコイなお前。
「んでも良かったよー。よくぞわたしの意図を汲んでくれたね。ひめちゃん機嫌治してくれたし、友達として感謝しますよ?」
「はぁ」
暴露会は本当に地獄だったけどな。僕はもうあの黒歴史を知ってしまった鳥羽さんと目を合わせるのが辛い。
その後、湊はこれはほんのお礼だと粒状のチョコ菓子をそっと渡してくれた。
「それでなんだ?今日も天束さんと帰れってことか?それならこうやって天束さんのこと待ってるぞ」
「まぁ、そーゆーことなんだけどー」
「何?」
「そろそろ、ひめちゃんからのお返し欲しいと思わない?」
「お返し?」
「友達としての好感度もそこそこ上がったことだし、ひめちゃん側からご褒美貰えるかもー?」
抽象的だな、揶揄ってんのか?ご褒美なんてずっと待っているが。
「それはいつなんだよ」
「それはひめちゃんの考えてることだからみなにはさっぱり〜?でも、そろそろだと思うよー」
なんだよ。そこは湊が催促してくれよ。
「そんなにニヤけてどしたの?今から楽しみ?」
「いや、湊が友達のことそんなに想ってくれるようになって良かったなって。昔のお前ときたら他人の意見なんてまず耳に入れない、自己中極めた魔王だったじゃん」
「え?」
やべっ、湊には直球過ぎたか?
「ごめん、もっと言葉選ぶべきだったかな」
「ううん違うの。もう高校生だよ!!みなだって変わったの!女の子の変化に気づけない男はモテないぞー!」
「モテる気はないんで、はい」
「とにかく!今日もよろしくねー」
「わかったよ」
湊が去った後も、僕はそのまま天束さんを待った。僕と会ったらご褒美をくれるんじゃないかと根拠のない未来に期待しながら。
だけど一向に階段を降りてくる気配はない。後で聞いてみたら、天束さんは日本史の点数が悪すぎて補修していたらしい。
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