第11話 ミッション1:学校一ノ美少女ト友達ニナレ 《達成度80%》

「あっ、天束さんはどこまで?」


「あっ、あたしは、都会の方だから、乗り換えない、と」


「そっか、じゃあ途中まで、一緒だね」


「うっ、うん」


 そうして隣ながらに電車に向かい、電車に揺られて やってきた準急に乗車し、空いてる座席に横並びで座る。この瞬間も天束さんと離れ配置がいいかなと迷ったけど、考えてる合間に天束さんが横に座っていた。


 全行程全沈黙!


 休日の夕方ごろで乗客も少ないのでなお気まずい。話しかけたいけど、何話せばいいかわかんないし、今さら漫画の話を掘り返してもなぁ。今日のことを話すのも気がひける。


「ね、ねぇあのさ」

「なに?」


 けど僕もわりかしむしゃくしゃしてるんだ。あの部長に一発入れる度胸はないけど、部長がこじ空けた穴を塞ぐのは僕にもできることだ。


 とりあえず、最初に状況確認。


「あ、天束さんは今日のこと、どこまで分かって、ました?」


「え?」

「ん?」


 あれっ?鳥羽さんも把握してたし、天束さんも湊の計画くらい気付いてたと思ったんだけどな。見当違いだったか?


「あっ、今日っていうのは、その、湊の思惑というか……その、天束さんは気づいてたのかなって……」

「あっ、あー……あれっ、かっかぁ……」


 やっぱり気付いてたのか。湊は思惑がよく顔に出るんだよ。


「と、鳥羽さんと磯部さんがやけに緊張してるし、規則に従順な鳥羽さんがソロ活動持ちかけるのおかしいと思ったし、その後ふたりしていなくなるのもわざとらしかった。そもそも鵜方くんがいること自体がおかしいし。なんとなく鵜方くんをあたしに近づけようとしてるのかなって気はしてたよ」


「全部見破られてら」


「ふふっ」


「で、でも勘違いしないでね。湊は別に天束さんが鬱陶しかったからとか、そんな邪な理由でやったんじゃないよ」


 言いずらいな、直球で伝えても天束さんを傷つけるだけだし。かと言って取ってつけたような案だとすぐに見破られそうだな。


「磯部さんが主犯なんだ。なら、理由は聞かなくていいかな」


「えっ!?」


「だって、磯部さんって誰かをいじめるようなタイプじゃないもん」


 湊──ッ!!!

 湊の無邪気な性格が功を奏した!アイツには何か褒美をやらないとな。


 さて、こっからが僕の役目だ。


「そ、それで、さ……えっと……」


「?」


「あんまり心配しなくていいと思うよ」


 僕は照れ隠しに頬を隠しながら天束さんに言った。


「話を聞いてる限り、湊も鳥羽さんも天束さんのこと特別だと思ってるみたいだし、ふたりと疎遠になるとか……そんな心配する必要ないと、思う」


「え?」


「そもそも机囲んで話してるだけで十分友達やってるんだからさ、話さなきゃなんて気遣いいらないと思うし、黙りたければ黙ればいいと思う。そんで話したければ思う存分話せばいい。それを許される環境が本当の友達じゃない?」


 友達いない僕が言っても何の説得力のないが、精いっぱいの励ましのつもりだ。


 天束さんは俯いてしまった。今朝の湊と同じ反応だ。


 僕、何か変なこと言った?それとも貶しちゃったとか?

 

 天束さんは繊細な人間なんだ。言葉の一言一句が彼女の感情を大きく揺るがすと思え。だからこそ口に出す言葉は厳正に選ぶべきだったのに……さっきから思ったことどんどん口に出しやがって僕の馬鹿!

 

「鵜方くんは、優しいんだね」

「え?」


 天束さんのよく見ると、口角がほんのちょっとだけ釣り上がっている。


「あっ、あのさ……」

「ん?」

「も、もしよければわ、わた、わた、わたs、わっわたたたたたたたたたたた」

「大丈夫?」

「ごごごごごめんなんでもない!!!」


 確定演出とも取れるような発言。だけど性格が災してカミカミで終了してしまった。だが、この好機を逃すわけには行かない。これは僕から切り出すしかないな。


「天束さん」


「な、なに?」


「い、今までは……その……授業中とかに少し話すだけだったけど……その……共通の話題が……できたことだし……」


「うん」


「これからは、えっと、その……」


 くそっ、肝心な時に言葉が出てこない!頭が真っ白になってしまった。


「その、と、ともえっと、いっ!いつでも話せる、ね!あっ──」


 話せるねじゃないんだよ!なんで素直に言えないんだよ僕のバカ!

 あぁ、酷い誤解を与えてしまったかもしれない。わかんないけど、今後の付き合いを左右させてしまうような爆弾発言をしてしまった気が……


「よろしくお願い、します……!」


 その声は、電車の雑音の中に消えた。

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