第5話 ミッション1:学校一ノ美少女ト友達ニナレ 《達成度40%》
というわけで湊の班+僕はさっそく行動を開始した。
今は駅前の通りから少し離れた住宅街を仲睦まじく会話しながら歩いている。
まあ僕はというと、三人の後ろをトボトボと歩いてるだけだけどね。
「でさー昨日見たドラマがめちゃ良くてさ!名古屋駅が悪鬼に占拠されるヤツ」
「へぇーみなもそういう系見るんだ。てっきり恋愛系だけかと思ったけど、珍しいね」
「そりゃ見るよ!主演が生駒くんだし!」
「俳優目当てかよ」
「ひめちゃんも見た?」
「き、昨日は……山本理沙サスペンス見てて……」
「なにそれ?」
傍から見ると美少女三人がきゃぴきゃぴ騒ぎながら歩いている後ろを男が追っかけているこの光景。当然、注目の的にならないはずがなく……
さっきから主に男たちからのピンク色の視線がずっと突き刺さっている。僕の立ち位置は完全にストーカーかよくてパリピだな。
一緒に行動するならせめて会話に参入するべきだが、湊はともかく天束さんとはペアワークで数回キャッチボールしただけだし、鳥羽さんに至っては話したことすらないんだが。これから僕どうすればいいの?
つーか楽しくなるとか言ってるくせに僕はまるっきり蚊帳の外じゃねぇか。あぁ気まず。通報される前に退散したいんだが。と、目の前を歩く鳥羽さんが急にスピードを落とし、僕の右隣に着いた。
「えっと、よろしく」
「こ、こちらこそ……」
僕の気を察して接近してくれたのだろうが、気まずすぎだろ!?なんで休日にこんな気分味わないといけないんだよ!!
「ほんと、湊がごめんね」
「えっと、まっ、まぁ暇だったし」
「湊に仕込まれたんでしょ?」
おい即効バレてんじゃねぇか。
「まっ、まさか……」
「ふふっ、みなとは伊達に一年の付き合いだからね。鵜方くんこそ……」
「いいよ。慣れっこだから」
さすがは秀才鳥羽さん。湊の思惑なんてお見通しのようだ。計画まで知りようはないと思うけど。
「そういえば、鵜方くんって学校で湊と話してるとこほとんど見かけないけど、湊の方から鵜方くんに挨拶する時たまにあるし、鵜方くんのことあだ名で呼んでるし、二人はどういう関係?」
「ぼ、僕と湊は幼馴染、っていうか」
「幼馴染、なるほど。だから湊があだ名で呼んでたんだ」
「そうそう。そんな感じ」
「そっか」
「うん」
「……」
「……」
それっきり会話は途切れてしまった。
気まず!こんな調子で天束さんと友達になんてなれんのかよ!
「鵜方くんは、小説とか好き?」
「え?あっ、う、うん。それなりには」
て言ってもライトノベルだけどね。好きな作家とか聞かれたら完全に詰む。
「どんな小説読むの?好きな作家とかいる?」
お、オワッタ……
「ご、ごめん。僕、小説は読むけど……文学研とか、鳥羽さんみたいな人が好むようなジャンルじゃないと思うよ」
「そうなんだ」
「ほ、ほんと、なんで僕こんな所にいるんだろうね!僕は湊と一緒にいるから、二人は自分の活動頑張って!」
何言ってんだ僕!これじゃあ計画どころの話じゃない!
「いや、鵜方くんはひめと一緒にいるんでしょ」
「……ら、らしいね」
「それに鵜方くんなら、適任だと思うし」
「そういえば鳥羽さん。さっき湊にツッコミまくってたけど、あれってもしや演技?」
「ひめが困惑しないように話の辻褄を合わせただけ」
鳥羽さんの慧眼凄すぎる。素直に人として尊敬する。
「ひめはわたしたちなんかに無理して付き合うより、鵜方くんみたいな人と話していた方が幸せになれると思う」
ほう、二人とも考えること同じなんだね。だけど、
「湊もそんなこと言ってたよ。けど僕はそんなことないと思うな」
「そんなことって?」
「僕にも、天束さんの気持ち大いにわかるから」
「鵜方くん?」
「友達になれるよう、頑張ってみるね」
*
住宅街を歩いて数分。家々の中に突如出現した鬱蒼と木々が茂る森。この先が今回の目的地だ。ここはこの辺に住んでる住民の憩いの場になってる緑地公園。森の中にはハイキングコースが続いており、都会ながら森林浴が楽しめる絶好の場所だ。
僕らはハイキングコースの入り口に到着すると、六月の熱波にやられた僕はペットボトルの天然水を一気飲みし水分補給。天束さんが汗ダラダラで袖をまくってる姿を一瞥し、水を吹き出しそうになったのは言うまでもない。
その間、鳥羽さんがこげ茶色のリュックサックからしおり取り出し、それを僕らに見せながら指示してくれた。
「じゃあ、ここからは個々に行動しようか。四時ごろにまたここに集合で。くれぐれも迷わないでね」
「鳥羽ちゃんったら部長みたーい!でもさんせー」
「あたしもそれが良いと思う!」
なるほど個別ね。鳥羽さんも湊に気づかれずとも協力体制らしい。
でも個別か……個別?
「あっ、みてみて鳥羽ちゃん!あっち!!」
「あっ、ちょ、待って!」
大胆だなぁ……けどいきなりペアで行動しろって言われても僕と天束さんが一緒に行動する理由なんてさせる側もする側もないもんな、こんな感じのハプニング的な展開が一番説得的だ。
さっ、さて、茶番で置いてかれた僕は天束さんと。
……ってあれ。
天束さん、どこにもおらんのだが。
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