第4話 ミッション1:学校一ノ美少女ト友達ニナレ 《達成度20%》

「いいか、くれぐれも、危険な場所へは立ち入らないように!」


「「「「「はーい」」」」」


 湊は一旦僕と別れ、天束さんと鳥羽さんもいる文学研の集団に合流した。その間に僕は物陰で待機しつつ、集団が分散しだした頃合いで湊に接近する。


「ごめんお待たせ」


「腹痛治った?」


「もう大丈夫……か……も」


「ひめちゃんー。せっかくの遠足なんだからもうちょっと可愛い服着てこよーよー」


「いや、その……」


「遠足気分なのは湊だけじゃない?」


「まあいいや。早速中宮の心スポ巡りに……」


「違うでしょ」


「いッッたぁ~。おでこ叩かないでぇ~」


 遠くからなのに彼女たちの一言一句がそよ風のように僕の耳に届く。その声は緊張しまくっている僕の胸を優しく包み込んでくれる。まさしく耳の保養だ。彼女たちはいつか世界を救うかもしれない。


「あっ、スマホ充電し忘れた……」


「どしたの?ひめちゃん」


 暇なので三人の服装に注目してみる。

 天束さんの服装は六月の日差しが照りつける日だというのに長袖。それも無地の薄灰色のカットソーにジーパンという無難も無難すぎて萌えのかけらもない格好。が、適度に天束さんのボディラインが浮き出ており、シンプルさもギャップとなり天束さんの美を引き立てている。


 一方の鳥羽さんはシンプルなホワイトのオーバーTシャツにブラウス、そしてフレアスカート。こちらも無難ではあるが知性派の鳥羽さんからすれば文学少女の側面が光る。


 適度に部員が少なくなってきたな。部長のグループも近くにあるコンビニに入って行った。そろそろ頃合いか。


 き、緊張するな。なんで休日にこんな気分味わないといけないんだ。

 そっ、そぉっといくか、そぉっと湊に近づいて気づかれるのを待とう。もし湊が無視した場合はこちらから話しかける義理もないので帰宅させていただく。


 そぉっと、そぉっと……


「あれっ?よっちゃん!こんなところで何してんの?」

   

 いやお前、口実は……


「は?」


「いいから、合わせて合わせて!」 


 おまっ、いちばんされたくなかった邂逅の仕方実行すんな!その後の口実どうすんだよ!


「えっ、いや、あの、き、奇遇だなぁ……」


 湊、頼むからお前のミジンコの脳でみんなの納得いくもん考えてくれ!


「あれ?よっちゃん、今日は湊と遊びたいって目してない?仕方ないなー、これから三人で散歩的なことするんだけど、じゃあ一緒に行く?」

  

「ちょ、みな、いきなり何言って」


「磯部さん!?」


 じゃあジム行く?みたいなノリで言うんじゃねえよ!パリピか!!

 天束さんと鳥羽さん仲良く思考停止してるじゃねえかよ!!!

 これ逆に行きたい!って応えたら二人にパリピって思われるんじゃ、


 ……そうだったわ。湊は脳内空っぽのパリピだったわ。


「そ、そうだね……た、たまたま暇だし、い、いいよ……」 


「よっし!じゃあさっそくしゅっぱーつ!」


「待ってツッコませて」 


「磯部さん!?」


「いつも遅刻しかしないみなが時間通りに来たのがすごく不思議だったけど、なんか仕込んだ?」


「そそそそそそそんなわけないじゃーん!あたし的には人数増えた方が楽しいって言うかー……」 

 

 やめろ。言い訳したところでますます不審がられるだけだぞ。


「楽しいとかじゃなくてこれ部活だから。いくら社交性ゴリラだからって部外者連れ込むのはプライベートだけにして」


「ぶ、部活だとしても人数増えた方が楽しいっていうか……」


 お前はそれしか言えんのか。てか社交性ゴリラは鳥羽さんも辛辣すぎる。

 

「人数増えたところで湊の場合、活動に支障が出るだけでしょ」


 ぐぅの音の出ない正論だね。


「そんなこと言わないで!ひめちゃんはいいよね!」


「い……いいと、お、おもう、よ……」


 おい、陰キャに同意求めるな。迷惑かけたくないとか言ってるくせに自分から迷惑かけてるじゃねえか。

 

「まぁ、ひめが言うなら」

 

 いいんかい!


「えっと、鳥羽さんも、天束さんも、よろしくぅ……」


「よろしく」


「……よろしくお願いします」

 

 天束さんめっちゃ声低い!そりゃね、せっかく顔見知りの三人だったのにほぼ喋ったこともない僕が突然参加するんだし。そんな声にもなるよ。

 

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