第7話 ミッション1:学校一ノ美少女ト友達ニナレ 《達成度2%》


 こ、この奥には確か、噂程度だけど人里離れた礼拝堂があると小耳に挟んだことがある。噂通りただならぬ雰囲気を醸し出してるし、ちょっと行ってみるか。


 暗いのでスマホの懐中電灯機能を使って中を照らす。


 中は割と広く、3〜4人程度の団体さんなら余裕で横並びして歩くことができる。ただ、体感で歩くほど狭くなってる気がするので、奥までは厳しそうだ。洞窟は面白いことに行く先々で枝分かれしている。あたしは意識してまっすぐに進んでいるつもりだけど、どこかで道を間違えてる可能性も微レ存。


 ていうか真面目に引き返すべきかもしれない。スマホは瀕死状態。洞窟は複雑な迷路。おまけにあたしはひとりぼっち。小説なら百点満点の迷子フラグだ。  


 でもなー外出てもなー。合流したらまた気まずくなるだけだしなー。心なしかなんだかこの暗闇落ち着くんだよなー。


 って言ってる場合か!迷子になったら多方面に迷惑をかけるのでこのくらいで引き換えそう。……スマホの電池切れた……


 だ、大丈夫!すっかり目は慣れてきたし!それにずっとまっすぐ進んでたしこのまま引き返せば戻れるはず……


 あたしは無心で進み続けた。だけど進めど進めど太陽の光は見えて来ず、逆に暗黒に包まれるだけだった。


 今更になって思い出したけど、この洞窟、いたずらに入り込んだ子供が何人も行方不明になったことで有名な場所だった。結局は全員見つかったんだけど、その時は地元の人や警察が総動員になって探しまくった末の発見だ。


 普段からひとりぼっちに敗北感を禁じえないのに、行方不明になったことで返って注目され、多くの人から同情の眼差しを向けられる。これほど死にたいと思う瞬間は他に存在しない。


 今日だってスマホのバッテリーがあと少しな時点で洞窟に入らない、もしくは手前で引き返すことだってできたはず。だけど好奇心、そしていつからか勝手に芽生えた使命感と戦った結果、いつまでも答えが出せずに進み続けてしまった。


 あははははっ……こうやって客観的に自分を批評することは大得意なんだけどなー。そのせいで肝心の決定が疎かになってしまうのは昔からの悪癖だ。


 でも、鳥羽さんと磯部さんには何がなんでも迷惑はかけたくないと気張ってたんだけどなぁ。それも今日でおしまいか。


 部長にキレられ、二人には愛想尽かれ、あたしはもう「負け組」転落だ。こんなの最初から「負け組」なよりも屈辱だ。あたしも、うなんとかくんみたいに最初から「負け組」だったらよかったのにな。そしたらこんなことも起きなかったわけだし。


 そんな自己卑下を繰り返してたせいで前を見てなかった。気がつくと、広い円形の空間に出た。相変わらず光は一切差し込んでないが、その空間に目を凝らすとちょっとおかしなものがあった。


 空間の中央に、謎の魔法陣。誰かが魔族召喚ごっこでもしてたのかな。


 そうだ、きっとここであたしのような世間に居場所がない人間が、外の世界に嘆いて誰もいないここでひとり寂しく現実逃避していたんだ。

 

 社会に見捨てられたもの同士、厨二病君の残滓に身に染みながらここで待とう。死んじゃったら、その時はその時だ。あぁ、もしうなんとかくんと一緒に行動すれば、こんな展開にならず……友達になれたかもしれないのに……ほんと、なにやってんだよ……あたしの、バカ……


「天束さん?」 


「うぎゃはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る