第153話
「くちゅんっ!」
あまり聞いたことのないくしゃみの音。
この部屋には俺以外に彼女しかいないから、無論食欲モンスターのくしゃみである。
「冷房寒いか?」
リモコンを手にする。
「んー……というよりこれは!」
ちょっと楽しそうな秋津。
現在時刻は22時、リビングでだらだらしている。俺はソファに座り、彼女は俺と直角になるようにだらんと寝転んでいる。
俺の太ももの上に投げ出された秋津のふくらはぎをもちもとつねる。
このいつまでも触っていたくなる感触……!
「やめて〜〜」
「これ、癖になるな。」
幸せなんて、案外その辺に落ちてるもので。
形が見えないだけでそこにあったりして。
「唐揚げ作る時みたいな……もしかして食べようとしてる?」
すぐ食べ物に脳みそが持っていかれるところ、さすがは食欲モンスターと言ったところか。
というかどこか上の空な彼女を見て合点がいく。
「お前……」
「ん〜?」
顔を上げずに生返事。
「熱あるだろ」
そのまま秋津の額に手を当てる。
高熱というほどではないが、明らかに普段よりも熱い。
「あちゃ〜バレちゃったか」
「よし、さっさと寝るぞ。明日には治さないとな」
「もし治らなかったら?」
にんまりと笑顔を作りながら、秋津は脚をぱたぱたさせる。
やめろ、顎に当たったらそのまま俺が寝てしまうわ。
「家でリモートワークだろ」
「え、?」
「ん?」
思わずといった表情の秋津と目が合う。あれ、おかしいこと言ったか?
「普通、熱が出たら仕事は休むのよ」
そうか。うっかりうっかり。
納得をアピールするためにも深く頷いておく。俺は決して労働に魂を売り渡していない。
「この前あんたが熱出た時誰が看病したと思ってるの」
「秋津様です」
「こら」
これだけで何を求められているかわかるのも考えものだ。
「……ひより様です」
「ということは?」
この後、俺が何を言うのかわかっているのか、彼女は期待を込めたまなざしでこちらを見つめている。
「はぁ」
ため息をひとつ。これは負けたわけじゃなくてだな。
「分かった分かった、明日は俺も休みとるから」
「やった!有くんの看病イベントだ!」
がばっと起き上がる彼女。
熱が上がるからやめなさい、というかそんなハイテンションで言うことでもないだろうに。
「何する何する〜?家で映画とか見ちゃう?」
こいつ、ほんとは元気だろ。
軽く眉間をでこぴんすると「あでゃっ」と鳴き声が。
そのまま手を絡め取られて彼女の物に。
家の中でも手を繋ぐことに違和感を覚えなくなってしまった、いやはや慣れとは怖いものだ。
かろうじて残った自由な手を彼女の髪に走らせる。
まるでねこのように目を細めた秋津を見て、5分だけ、と頭で念じながら俺も意識を手放した。
◎◎◎
こんにちは、七転です。
台風が過ぎ去って、少し空気に秋の匂いが混じるようになりましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
私は友人がまた結婚しそうです。
流れに置いていかれてる……!
もう1作品更新始めたら頭おかしいですかね……?やる気だけはあるんですが。
実は最近、Twitterを新設(?)しました。直近色々お話したいこともあるので、もしよろしければフォローしてください!
@nana7_ten10
です。前のアカウントフォローしてくださってた方はお手間を取らせます……!
この作品もぬるぬると更新していければと思いますので、引き続きよろしくお願いします。
(別の作品も投稿してるので、ドタバタラブコメや目まぐるしくシーンが変わるファンタジーに疲れた方は、ぜひそちらも読んでくださると嬉しいです)
またそのうち、毎日更新できるように頑張ります。
ではまた!
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