第132話 花見で一杯①
さて俺は今どこにいるでしょう。
周りには子連れの親、芝生で走り回ってフリスビーやらキャッチボールやら楽しそうだ。
そう、公園である。しかも土曜日夕方の。
ほんわかした空間で一人、俺はブルーシートの上に座っていた。
どうしてこんなことに……。
理由は明白、ことの始まりは先週の水曜日。
小峰さんが事務課でお花見しようと言い出したのだ。最近の若い人たちはこういうのあんまり好きじゃないかと思ったが、春海さんも鈴谷君も二つ返事で参加するとのこと。
え、じゃあ順当に行けば二人が場所取りじゃない?と思ったが、お酒やらおつまみやらの買い出しに行ってくれるとのこと。
なら仕方ないか……。
家に置いてきた秋津も今日はやけに聞き分けが良かった。
いつもだったら「やだやだ!私も行く!」とか言うくせに今日はすんなりと送り出してくれた。
ぼんやりと空を眺める。
陽も落ちてきてそろそろ子どもたちは家に帰る頃だろう。
反対にクーラーボックスやお弁当を持った大人たちが公園に集まってくる。
「おーい!鹿見〜!」
遠くから呼ばれて顔を向けると、なにやら大きな袋を抱えた小峰さんが。
「場所取りありがとな!」
「いえいえ……それにしても沢山持ってきましたね」
カラカラという缶の音が耳を撫でる。
「せっかくの花見だ、新人はいないけど俺達も飲もうぜ」
ウキウキと買ってきた酒をブルーシートに並べる先輩は本当に歳上かと疑ってしまう。
不意に風が吹いて木々が揺れる。
そのざわめきで、近付いてきた足音に気が付かなかった。
「先輩、お疲れ様です!」
少し底の上がった靴、春らしい白のワンピースに小さな鞄、見上げると春海さんが腰を曲げてこちらを覗き込んでいた。
「お、いらっしゃい、買い出しありがとうね」
舞う桜の花びらが夕陽を反射している。
まるでスポットライトに照らされたかのような彼女は、口の端を上げて微笑むと隣に腰を下ろす。
「ちょ、待ってって」
息を切らした鈴谷君が重そうな袋を2つ抱えて到着。あー、これ同期同士で力関係が……。
「お気になさらないでください、彼は罰ゲームで持ってるので」
俺と小峰さんの表情を読み取った彼女はにこやかに笑う。
これからも大変だな、鈴谷君……。
「それにしても春海さんが先輩を見つけてすぐに走りだ……いだっ!」
俺にはほとんど見えなかったよ、その右ストレート。平謝りしている鈴谷君を見ていると、なんだか昔の自分を思い出すな。
「あとは相澤さんか」
ひとしきり準備を終えた小峰さんが辺りを見渡す。
「課長、よく休日にOKでましたね」
「今日は旦那さんがお子さんの面倒見てくれるらしいぞ」
わいのわいのと若手で話していると、見覚えのある姿が近付いてきた。
「あら、もう準備できてるみたいね。ありがとう」
車のキーをくるくると手元で遊ばせながら、件の課長の登場だ。
おかしい、来たのは相澤さん1人のはずなのに足音は2つ。しかも見たことのある靴なんだよな、もう1人の分は。
「小峰君、言われた通り鹿見君の家の前で秋津さん拾ってきたわよ」
◎◎◎
お久しぶりです、七転です。
桜も見頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
4月は環境が変わる時期、新しく進級、進学、就職された方も沢山おられると思います。
社畜の皆さんは今年も私と一緒に社会をぶん回していきましょうね。
かくいう私も転職して新しい職場で働き始めました。何とか耐えますように……!
話は変わりますが、ブックマーク数が5,000人を超えました、、、驚きすぎて声も出ないです。当初はこんなはずじゃなかったんや……。
ほんとうにありがとうございます。みなさまの日々の少しだけ、私に時間をいただけると幸いです。
遅筆ながらも更新していきますので、引き続きよろしくお願いします。
春だし新しいことでも始めようと、別の作品をカクヨムの海に流してみました。またどこかでお会いできると嬉しいです。
ではまた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます