第048話 相性
「あ~、面白かった!!」
「早く来月になって欲しいです。あっ、そろそろ時間ですよね。送りますよ?」
「えっと……今日は金曜日で明日休みだし、もう少し居たらダメかな?」
如月さんがモジモジしながら目を潤ませる。
僕としてはそりゃあ、もっと一緒に居たい。
でも、やっぱりそれはマズいと思う。
「い、いや、それは……」
「だよね。帰るよ」
僕が言い淀むと如月さんがズーンと物凄く沈んだ顔になる。
「いや、大丈夫ですよ。折角ですしゲームでもしましょうか」
「え、いいの!? ありがとう!!」
僕の声を聴いてガバリと振り返り、如月さんは目をキラキラと輝かせる。
「いえいえ、こちらこそ楽しく遊ばせてもらってますから」
「あっと、ご飯はどうしよっか?」
そうだ。そろそろ夕食。自分一人なら食べなくても、適当でもいい。
でも今日は如月さんが来ている。適当に済ませるわけにもいかない。
「そうですね。冷蔵庫の中にあまり食材がなかったですし、今から買い出しに行くのもなんなので、出前でも取りますか?」
「ホント? えへへっ、実はお母さんから夕食代を預かってるから一緒にどうかと思ってたんだよね」
最初から一緒に食べるつもりだったって!?
くぅううううっ、そうやって如月さんは僕の心を鷲掴みにする。
「そ、それは光栄ですね」
「ぷっ。なにそれ」
そのせいで変な返事になってふきだすように笑われてしまった。
その笑い方も僕の心にクリーンヒットだ。
「そ、それじゃあ、デミノピザに注文しますか? どんなピザが好きですか?」
僕は動揺しながらも話を進める。
「マヨネーズが入っている奴がいいな。あとチーズがタップリな奴」
「あぁ~、めっちゃ分かります。僕も好きです」
「私たち趣味どころか食べ物の好みまで似てるね?」
「そ、そうですね」
如月さんは無意識にドキドキするようなことを言ってくるんだからたまらない。
無邪気に笑いかけてくる如月さんに焦る。
「美味しい!!」
二十分ほどしてピザが届き、二人で食べ始める。
暫くピザなんて食べてなかったけど、久しぶりのピザは美味い。
邪道と言われるかもしれないけど、マヨコーンやバーベキューチキンなど、マヨネーズを使っている種類が好きだ。
今回頼んだのはマヨコーンとチーズばかりのピザ。
「やっぱりマヨコーンが至高だね」
「え?」
僕は如月さんの言葉に驚いて間抜けな声を漏らす。
「どうかしたの?」
「いえいえ、僕もピザの中でマヨコーンが一番好きなんですよ」
僕は如月さんの質問に首を振る。
まさか、僕と同じことを考えているとは思わなかった。
「そうなんだ。一番好きなピザまで一緒だなんてね。私もびっくりだよ。もしかして私たち凄く相性がいいのかもね?」
からかうような笑みを浮かべる如月さん。
相性がいいのかもね。
理想のヒロインそのものである如月さんにそんなこと言われたら、僕の心臓が口から出てきそうになるよ。どうか勘弁してください。
「い、いえ、僕が如月さんと相性が良いだなんて……」
「嫌?」
恐れ多くて否定しようとしたら、否定できない返事が返ってきた。
「そういうわけじゃありません」
今日もズルいよ、如月さん!!
そんな風に問われたら嫌だなんて言えるはずないじゃないか。
勿論全く嫌じゃないけど。
「よろしい。さぁさぁ、冷めないうちに食べよ」
「そうですね」
僕たちは中断していた食事を続けた。
「ピザってたまに食べたくなりますよね」
「うん、ミャックやケンツッキーと同じだよね」
「ああ。確かに」
食べて満足した僕たちは雑談をする。
「来月からヴァルナイの二期やるけど、イラストとか描くの?」
「はい。放送日に合わせて描いてアップしようかと思っています」
いつしか絵の話題に。
「えぇ~、やっぱりそうやって宣伝するんだね」
「そうですね。少しでもフォロワーが多い方が有利ですから」
「いいなぁ。描いているイラスト見てみたいなぁ」
如月さんが目を輝かせて僕を見つめる。
くっ。そんな風に見つめられたら断るのを躊躇ってしまう。
家に他の家族がいるのならまだしも、僕たち以外いない状態で自室に二人きりはアウト中のアウトではないだろうか。
かと言って如月さんの願いを断るのも難しい。
うーむ。別にイラストを描いてるところを見せるだけだし、変なことをするわけじゃないから大丈夫か?
「それじゃあ、見てみます? 描いているところ」
「えぇ~、いいの!?」
そこまで喜ばれてはもう後戻りはできない。
「本当に見るだけなら、ですけど」
「勿論だよ!! 神様に誓って!!」
こうして僕は如月さんのイラストを描いている所をみせることになった。
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