第047話 い、いいんだろうか……

 一緒にゲームをするようになった日から如月さんは毎日ウチに来ている。


 自宅に荷物を置いたら、そのままゲーム機を持ってついてくる。

 もう今週は四日目だ。明日も遊んだら平日は毎日遊ぶことになる。


「復習終わり~」

「お疲れ様でした。お茶持ってきますね」


 一緒に授業の復習までするようになった。


 そのおかげでお互いに疑問だった点が質問できるようになり、さらに復習の質が上がったし、悩む時間が減った分速く終わるようになって効率アップ。


 とても助かっている。


 でも、いいんだろうか。如月さんともあろう方が僕なんかの相手をしていて。


 僕としては推しとの素晴らしい時間を独り占めしているので嬉しいのだけど、如月さんの家族が心配したり、友達との関係が悪くなったりしないだろうか。


「どうぞ」

「ありがとう」


 如月さんは僕が出したお茶を飲む。


「あ、あの、大丈夫ですか? 毎日ウチに来てて」

「ん? どうして?」


 如月さんはそんなことを言われるとは思わなかったのかキョトンとした表情になる。


「いや、親御さんとか心配しないかなって」

「ああ、それは大丈夫。お母さん帰ってくるの遅いから。それにちゃんと言ってあるし」

「そ、そうですか」


 僕の取り越し苦労だったみたいだ。やっぱり如月さんはしっかりしている。

 彼女がそういうのなら問題ないのだろう。


 でも、何をちゃんと言っているのか少し気になる。


「そんなことより、今日はアニメ見ない?」

「珍しいですね。何がいいですか?」

「少しマッタリしたいなって。そうだなぁ……久しぶりにヴァルナイ見たいかも」

「あぁ、良いですね。ウチにありますよ」


 今日は一緒にDVDを見ることに。


 ヴァルナイとは『ヴァルキリーナイツクロニクル』のこと。


 中世ヨーロッパ風の世界で、主人公の少女が、モンスターから人々を守る戦乙女ヴァルキリーという職業に憧れ、その養成機関に入学し、同じく入学してきた女の子達と切磋琢磨して成長していくアニメだ。


 数年前にアニメ化されたライトノベル作品だ。当時、陰キャンの他にこの作品も好きだったのでDVDボックスを購入した。


 持っていて良かった。


「あぁ~懐かしい……」

「本当ですね。このアニメがもう三年前とは信じられません」

「そうだね。早く二期みたいな」

「夏アニメでやりますもんね。僕も楽しみです」


 しかも三年越しで二期の放送が決まり、七月から放映が始まる。


 制作陣も同じだし、非常に楽しみだ。


 確かに見返しておくのはちょうどいいタイミングだと思う。


 それから僕たちは何度目か分からない作品を無言で見続けた。


「やっぱりヴァルナイはいいねぇ」

「ですね。王道的な物語でありつつ、日常系のほのぼのしたところもあって、それぞれのいいとこどりをしたみたいな良さがあります」

「分かるぅ。っと、今日はそろそろ帰るね。続きは明日みよ」

「分かりました。送りますね」


 CMなどがなくても一話二十五分。十二話も見たら約五時間。学校から帰ってきてから全部見てしまうと完全に真っ暗になってしまう。


 いくら親の帰りが遅いからと言ってそんな時間まで年ごとの女子と男子が二人きりでいるわけにもいかない。


 それに、時間的に夕食の時間が遅くなってしまう。あまり遅い時間に食べるのは良くない。女性なら猶のこと敏感なはず。


 僕は如月さんを送り、風呂に入ってイラストを描いて寝た。

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