第034話 推しの願い事
――ザワザワッザワザワッ
今日は学年全体が落ち着かない雰囲気が漂っていた。それもそのはず。ついに中間てテストの結果発表がされる日だからだ。
先生がやってきてその結果が張り出される。
ふっふっふっ。流石の如月さんと言えど、僕には勝てないはず。
「張り出されたぞー!!」
誰かの声でクラスメイト達が教室から出て、結果発表を見に行った。
ふぅ~、どれどれ、僕も見に行こうか。
「ヒッキー、見に行くのですかな?」
僕が立ち上がると、マギーが声を掛けてきた。
「だから、ヒッキーは止めろ。うん、一応な」
「それでは某も一緒に参りましょう」
「おう」
僕たちは一緒にテスト結果を見に行く。
テスト結果の表の前には人が溢れかえっていた。
僕はどこだ?
テスト結果の上の方から順に自分の名前を探す。
一位、全教科満点とかどういうことなんだ? 本当に人間か?
それ以下五位くらいまでは同じ人間とは思えない領域の数値を叩き出している。僕も結構勉強している方だとは思うけど、こういう人たちには勝てそうにない。
六位からが本番だ。六位から十位にはいない。
それじゃあ、十位から二十位には……。
「なん……だと……」
十位から順番に名前を見ていくと、信じられない名前が書いてあった。
十五位 如月美遊
え、え、えぇええええええっ、僕の名前はぁあああああっ!?
この瞬間、敗北が決定した。
そして、僕の名前は神様のいたずらなんじゃないかと思う位置にあった。
十六位 眞白弘明
なんと、如月さんとはたった二点差で負けていた。
おおう……後一問僕が正解していたら、如月さんに勝てたのに……。
――ピロンッ
スマホの通知が鳴る。
恐る恐るロックを解除すると、メッセージが届いていた。
『美遊:うふふっ。私の勝ち(ハート)』
僕が当たりを見回すと、少し離れた場所で仲良し四人組で結果を見ていた如月さんと目が合い、ニヤリと口角を吊り上げた。
うわぁあああああああっ。
も、もしかして、如月さんが僕に優しくしていたのは、ここでとんでもないことをさせるための布石!?
如月さんは天使みたいな顔をして、なんて狡猾なんだ。如月さんは僕に何をさせるつもりなんだ!?
裸で逆立ちして町内一周か?
それとも、お金を貢げとかか?
とにかく今日の帰り道は覚悟している必要がありそうだ。
その日は一日何も手に着かなかった。
「お待たせ」
「いえ」
その日もいつも変わらない流れで一緒に歩いて帰る。
「テスト、私の勝ちだったね」
「は、はい……」
もうどんなお願いでも聞く覚悟はできている。一度した約束だ。男に二言はない。
「どんなお願いしようかなぁ」
隣を歩く如月さんの顔が怖くて確認できない。
「それじゃあ、私とカラオケ行こ」
「え?」
ん、僕の聞き間違えかな?
「だから、カラオケに一緒に行こうよって言ってるの」
「……」
あれ? 一緒にカラオケ? 町内一周は? カツアゲは?
想定とあまりに違う答えに、なかなか脳が受け入れようとしない。
「駄目?」
「あ、いえ、全然大丈夫です!!」
僕の顔を心配そうに覗き込む如月さんに、反射的に答えた。
あぁああああああっ!! あんなに優しい如月さんが僕にそんなことさせるわけないじゃないか!! ファンとして恥ずかしい!!
一度滝行でも受けて腐った精神を鍛え直してくるべきだろうか。
そうか、一緒にカラオケかぁ。如月さんグループに混じるってことなのかな。
皆アニソンなんて絶対歌わなそうな人たちばかりだし、陽キャっぽい雰囲気を纏っているからちょっと近づきにくいんだよなぁ。
そんな所に僕が行って大丈夫なのだろうか。
「いつがいいかな?」
「そうですね。金曜日以降なら大丈夫です」
僕はスケジュールを確認して返事をする。
「分かった。それじゃあ、土曜日にしよっか。学校帰りに行くとバレそうだし」
「そうですね」
如月さんのお願いに従って、僕は如月さんたちとカラオケに行くことになった。
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