第017話 こっそりGW⑤(如月美遊視点)

◆如月美遊視点


 今日はゴールデンウィーク初日。


 私は皆との待ち合わせ場所でメッセージを打つ。


『美遊:今日のコーデ(ハート)』

『美遊:(画像)』


 内容は私の今日の服装の写真。


 送っちゃった、送っちゃった!!


 今まで自撮りを誰かに送ったことなんてなかったけど、ヒロに送ってしまった。


 すっごい恥ずかしい。


『弘明:如月さんにとても似合っています。可愛いですね』

『美遊:ホントに? 嬉しい!!』


 私は反射的に返事をしていた。


 初めて見せた私服。


 ヒロが褒めてくれた。その事実が私は本当に嬉しかった。だって彼に見てもらうためだけに頑張ってきたのだから。


『弘明:料理や映えスポットの写真という話だったのでは?』


 ヒロから抗議のようなメッセージが届いて私の悪戯心が擽られる。


『美遊:私の写真を送らないとは言ってないでしょ』

『美遊:それとも私の写真はいらなかった?』


 如何にも返事の困るメッセージ。


『弘明:そんなことはないですけど……』

『美遊:うふふ。じゃあ、送るね』


 ヒロの返答から困惑している様子が伝わってくる。


 ヒロが私の姿やメッセージを見て、ドギマギしてくれてると思うと、どうしようもなく嬉しくなって、はしゃいでしまう。


『美遊:眞白君はもう出かけた?』

『弘明:はい、僕はこれから新幹線で婆ちゃんちに向かうところです』

『弘明:(画像)』

『美遊:あっ新幹線。気を付けてね。ちゃんと帰ってきてよ、待ってるから』


 これで少しは私のことを意識してくれると良いな。


 メッセージを送った直後に私に声が掛かる。


「美遊~!!」

「待った?」


 真奈美と莉那が私の方に駆け寄ってくるところだった。


『美遊:二人が来たから、また後でね』


 二人にバレないように素早くメッセージを送り、スマホをカバンの中に仕舞う。


「全然。今来たところ」

「良かった。じゃあ、出発しよっか」

「おおー!!」


 合流した私たちは、人気のスポットを巡る。皆で写真を撮りながら、めちゃくちゃ楽しんだ。


「そろそろ、お昼いこっか」

「そうだね」

「お腹空いたよー」


 少し早いけど、皆お腹が空いているみたいだったので、映え写真が撮れると人気のお店に向かった。


 お昼から少し早かったおかげで並ばずに入ることができた。


「美味しかったね」

「そうだね」

「また来たいなぁ」


 人気が出るだけあって、料理が綺麗で滅茶苦茶美味しかった。


「ちょっと化粧直しに行ってくるね」

「はーい」

「了解」


 私は一人席を立ちトイレに駆け込む。


 スマホを見ると、ヒロからメッセージが届いていた。


 ヒロの写真の景色は、長閑で行ってみたいと思わせる魅力があった。


『美遊:うわぁ、ホントに自然が凄いね。とっても空気が美味しいそう』

『弘明:そうですね。そっちと比べると、空気が澄んでいるかもしれません』

『美遊:いいなぁ。いつか行ってみたい』


 誘ってくれないかなぁという淡い期待を込めたメッセージ。


 案の定、ヒロから返ってきたのは期待したのは違う答えだった。


 うんうん、そうだよね。分かってる。


 ヒロは私に気付いているわけじゃないし、まだ知り合って一月。それだけで誘ってもらおうなんて期待しすぎだよ。


『美遊:それがいいんじゃない』

『美遊:あっ私たちはご飯食べたよ』

『美遊:(画像)』


 私は自分の気持ちがバレないようにそのまま話を続ける。


『弘明:とても美味しそうですね』

『美遊:うん。美味しかったよ』


 メッセージを返したところで、外から真由美の声が聞こえてきた。


「美遊~、大丈夫?」

「大丈夫。すぐに出るね」

「うん、分かった」


 返事をすると、真由美は外に出ていった。


 危ない危ない。ちょっと長く籠りすぎたみたい。気を付けないと。


『美遊:そろそろ出るみたいだからまたね』

『弘明:あ、はい。また』


 私はすぐにメッセージを送って席に戻った。

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