第十五話 可愛い女幹部による性的拷問。

 頭の片隅にうっすらと残っている、遠い昔の記憶。

 今でも思い出せるのだから、当時の俺にとって、それは余程衝撃的な出来事だったのだろう。

 しかしそれはとても断片的で、何個にも切り分けられたケーキの様だ。


 正確な場所も思い出せない、実家ではないどこか違う家のお風呂。

 なぜそこに行ったのか、誰とそこに行ったのか。

 そして、誰と一緒にお風呂に入っていたのか。


『ユーティくん、一緒にお風呂入ろっか』


 僅かながらに取り出せる記憶のかけら。

 科白セリフのみが切り取ったみたいに響き渡り、次のシーンへと飛んでしまう。


『――――さん、ぼく、なんかへん』

『本当だね、いいんだよ、無理しないで』


 二人裸になり、俺はその人に全てを任せる。

 その人が誰だったのか、俺とどんな関係だったのか。

 大事なところは、何も思い出せない。


 お互いの全身が泡立つと、その人は俺の事を座らせる。

 両手で包み込み、まるで抽挿ちゅうそうするみたいに洗い続けたんだ。

 まだ、何も知らない、清楚だった俺は……その時、生まれて初めて精通する。 


『ぼく、ぼく、おもらし、しちゃった』

『可愛いユーティ、大丈夫、お姉ちゃんが全部綺麗にしてあげるからね』


 髪色も、背丈も、名前も、年齢も、何も思い出せない。

 三歳の時の、誰にも言えない秘密の記憶。

 その日を境に、俺は性的欲求というものを抑えきれなくなってしまっていた。

 父親の蔵書にも興味を持ち、同年代の女子からもキモイと言われ続ける。

 自然とそういう目で見てしまっていたのだろう。

 意識しなくとも、思い浮かぶは精通時に目の前にあった、まだ未成長の小ぶりなおっぱいだ。

 

 思えば、俺の性癖は、そこで決まってしまっていたのかもしれない。

 俺は、年上の女性が――――



☆★☆★☆



 目覚めは最悪、首、両手首と両足首、全部が金具で固定されてんの。

 さらに服の類は一切なし、全裸で椅子に座るとかどこの変態だよ。


 あーあ、俺の息子様もすっかり縮こまっちゃって、困った困った。

 見上げると格子窓があるみたいで、すでに太陽さんがこんにちはしてる。  

 結構な時間が経過したんだな……天井が無駄に高い、なのに何もない極狭な部屋。

 どこかの店の物置部屋か、監禁部屋か。

 

 どうやって抜け出すか……なんて考えてたら、目の前の扉が開いて、綺麗で可愛い女が俺の前に椅子を置いて、足を組んで座る。紫色の長髪を後ろで縛り、毛先は波打っている。毛の量が多くて長い睫毛、切れ目だけど綺麗な紫色の瞳、瑞々しいぷっくりとした唇。


 うん普通にめっちゃ可愛いんだが。

 そんでもって着てる服がヤベェな。


 オフショルダーで上乳全開のトップス、へそもくびれも見えてて、そんでもって穿いてるスカートがこれまた超ミニ。足を組んだだけで下着が見える。紫色してなんかラメラメした感じ……シルクって言ったか? 黒いフリルも両端に付いててめっちゃエロいわ。


「お前、結構な有名人だな」

「そうっすか」


 抑揚のない、淡々とした喋り方だ。

 見た目は二十代なのに、声だけ聞くと十代前半のように聞こえるね。


 男の視線に慣れてんのか、俺が見てても何も言わねぇ。

 ならじっくりと見ようかな、ちょっと動くだけで波打ってほよんほよんしてんの。

 股間部分も見せつけるようにしてるし、誘ってんのかコイツ?


「水炎の魔術師、ユーティ・ベット・トリミナル、十六歳。パラポネア魔術学校を首席で卒業するも、水魔術教団に所属するのみで就職はせず、母親であるヒルネ・ベット・トリミナルと共に実家へと帰省する。その後すぐに命魂魔術教団を壊滅させ、今はマーハロンの小娘の用心棒として店に勤務している」

「調べるの早くね? しかも詳細過ぎじゃね?」

「それだけ憎まれてるってこと」

「憎まれてるってもなぁ」

「教団という存在を舐めすぎ。心の拠り所にしている信者からすれば、いきなり我が家を失ったも同然。知らないみたいだから教えてあげるけど、火消しに母親が裏で相当動いてる。末端、しかも独自曲解とはいえバラン教はバラン教、最大宗派の一つを潰しておいて、無傷のままいられるはずがない」


 相手がその気になったら村が乗っ取られるよ。

 とまで語ると、女は立ち上がり、前かがみになって俺の両肩に手を置いた。

 おっぱいが目の前で揺れる、谷間が近い、良い匂いもする。


「本当はね、お前をどこかの人買いに売ろうかと考えてた」

「へぇ……」

「だけど、お前にはもっと別の利用価値がある。それは取りやめにした」

「そいつはどうも。だが、俺は悪事には手を貸さないぜ?」

「そういうのは求めてない。簡単、お前の母親、ヒルネ様公認の店にしてもらえば、ウチはそれでいい」

「母さん公認?」

「お前は自分の母親がどれだけ偉大か気づいていない。ヒルネ様公認店になれば、それだけで信者が武具を購入していく。それに、あと数日もすれば武具が大量に必要になる。こぞって売れる。その為にも、ライバル店であるマーハロンは今潰さないといけない」


 武具が必要になるって、なんだ?

 戦争でも起きるってのか? 


「だから、お前のことを味方につけたいと、私は思う」

「俺がティアを裏切ると思ってんのか?」

「これでも?」


 ぺろんって曝け出されたおっぱいが目の前で揺れる。 

 さきっちょのピンクの凸がちょっと小さくて可愛い。


「私はなユーティ、この店を繁盛させたいだけなんだ」

「は、はい」

「お前が望むのなら、この体好きにしても大丈夫だよ?」


 ほにゅんって、おっぱいが近づき、俺の顔を包み込むようにして両頬に触れる。

 待って! めっちゃ良い匂いだし柔らかいし、なにこれおっぱいってこんなんなの!? 

 ああああああ! ぱふぱふって、なんか頬にふれるぱふぱふが、ぱふぱふでぱふぱふしてる!

  

「はぁはぁはぁ」

「顔真っ赤にして、可愛い」

「はぁはぁはぁ、だ、だが、俺には幼馴染が」

「ほれ、乳首カリカリしちゃうぞ?」


 カリカリカリ……


 ああんっ! 嫌だ、俺の身体開発されちゃう!

 え、男でも乳首って気持ちいいの!? 女の子の特権じゃないの!? やだ、目覚めちゃう!

 

「はい、おっぱい目潰し」

「あ、ああああ! おっぱいの先端が俺の両目に!」


 なんて雑なおっぱいの使い方なんだ!

 しかしさくらんぼって結構硬いのね!

 めっちゃしこってるううぅ!!


「ふふふっ、嫌だ嫌だ言ってても、身体は正直だね」

「それどっちかって言うと俺が言うセリフじゃね!?」

「ほら、どうするの……下もこんなに大きくして」


 あああ、ヤバい、俺、可愛い幼馴染が三人もいるのに。

 これマジで落とされるパターンだ、童貞捧げるの、コイツ? 

 めっちゃ可愛いし、おっぱい大きいし、服装もエロイし、年上だし。


「な、なぁ……」

「なに? 欲しくなった?」

「あ、ああ、そうだな。でもよ、俺、まだ童貞なんだよ」

「……うん」

「キスだってした事ねぇ……その順番は、守りたいんだ」


 言葉にした途端、女は目を見開きながら口をきゅっと結んだ。

 シャラリと落ちた髪を耳に掛け直しながら、頬を赤く染める。


「い、いいよ……ユーティ、初心ウブなんだね」

「そういうアンタもな」

「……ラズ」

「あん?」

「ラズって呼んで。そして約束して、私の味方になるって」


 初めてのキスは、商売敵の女店主でした。

 いい匂いがして、蕩けるくらい甘くて、相手から舌を絡めてくる積極的なキス。


「……うふふっ、ユーティの唾液、飲んじゃった」


 それが何を意味するのか、分かってる?

 俺の水分がお前の体内に直接入ったって事だぜ?

 

 さぁ……反撃と行こうか。

 エロ仕掛けのお姉さんよ。


☆★☆★☆


次話「例え女といえど、悪者には容赦しません。」


※ユーティはレミとのキスは覚えていません(泣)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る