第十四話 ユーティ、敗北する。

☆ティア・マーハロン


 さすがに外で寝かすのは可哀想かな。

 寒くて震えてないかな?

 トイレとか大丈夫かな?

 喉乾いたりとか、どこか痛いとか。


 ……うぅ、気になって眠れない。


 だってユーティがいけないんだ。

 私の下着勝手に触ったりするから。


 ……そんなに、触りたかったのかな。

 私のだから触りたかった、ってこと?

 ユーティ、私のこと一番に好きなのかな?


 今日だって急に来てくれたし、当たり前のように助けてくれたし。

 用心棒とか言って、ずっと側にいる理由を作ってくれたし。


 ……やっぱり、家の中に入れてあげよう。

 外で寝かせて、虫刺されとか、病気になったら可哀想だ。

 万が一襲われても、ユーティなら、私きっと。


 ……うん、下着もムダ毛も大丈夫だよね。

 匂いは……大丈夫、かな? ちゃんとお風呂で入念に洗ったし。


 よし、覚悟を決めよう。

 大丈夫、相手はユーティなんだ、絶対に優しくしてくれる。


 ドキドキ……


「ご、ごめんねユーティ、今からでもお家の中で寝る……あれ?」


 ユーティいない。

 鎖もベルトも解いてある。

 どこに行ったんだろう。



☆ユーティ


「へぇー、詐欺じゃなくて強盗までするんだ」


 お店に来てみたらなんてこたぁねぇ、昼間追い返した二人組がいるでやんの。 

 顔を隠してズタ袋まで持参しちゃってよ、僕は泥棒でーっすってか?

 

「お前、どうしてここに」

「小遣い稼ぎに失敗した腹いせにしちゃ、随分と大胆じゃね?」

「うるせぇ! お前が邪魔しなけりゃ、こんな事せずに済んだんだ!」

「こんな事せずに済んだんだ。つまりは裏に誰かいるって事だよな?」

 

 ティアが愚痴ってたからな、最近になって被害が凄いんだってよ。

 詐欺や窃盗が集中して起きてたのも、誰かの恨みを買った証拠だ。


「シャイマックス・ラズベリー」

「……な、なんでお前がその名前を」

「バカ! 言うんじゃねぇ!」


 まぁ、コイツ等じゃ気付かないよな。

 昼間剣を奪った瞬間に、俺の水滴を染み込ませてコッソリ尾行してたとかさ。

 水魔術:探偵の涙。

 染み込ませた水から信号を送り続け、俺に居場所を知らせ続ける便利な魔術だ。


「売り上げガタ落ちだもんな、そっちの店。この二年間で随分とやられたんじゃねぇの?」

「……知ってるんじゃ隠す必要もねぇな、だが、俺達は依頼されただけだ」

「この店を潰せってか? その割には随分とみみっちい方法取るんだな」

「相手は十六歳の小娘だ、ちょっと揺さぶればすぐに音を上げる」

「俺の幼馴染は、そう簡単に音を上げないと思うけどな」

「そうかもしれねぇ……けど、お前の死体を見たら気が変わるんじゃねぇか?」


 俺の死体ねぇ、号泣とかしてくれんのかな?

 直前まで簀巻きにされてたんですけど。


「真実を知った以上、生かしてはおけねぇなァ! 行け、ヴィッグ!」

「ウオオオオオオォ!」


 ぶんぶんとまぁ大振りな剣筋ですこと。

 スキンヘッドは接近戦オンリーっぽいな。

 あの変態ジジイに比べれば大したことねぇけど。


「水魔術:捕縛水」

「ゴボバッ! ブボボボボッ!」


 まぁ随分とアッサリ捕縛されてくれたね。

 これ苦しいよな、俺も死ぬまで味わったから分かるぜ。


「はいもう呼吸できませーん。さぁどうするアニキさんよ、このままじゃ弟分が死ぬぜ?」

「死なねぇよ、俺だって魔術の一つや二つ学んでるからな……雷魔術:雷光牙ライコウガ!」


 ゴロゴロゴロ……ドンッ!!!


 なに? コイツ盗賊風の姿してんのに、魔術も使えんのかよ。

 だがしかし、放たれた雷の牙は弟分の顔に。

 

「アビャババババババッ!」

「ははっ、どこ狙ってんだ。ソイツ仲間じゃねぇのかよ」

「仲間だぜ? だから束縛から解放してやったんだよ」


 雷喰らってる奴が突然「バァッ!」って飛び出してきやがった!

 咄嗟の行動で判断が遅れた! で、今度は俺が捕まっちまった!

 やべぇ、女に抱かれんのは大歓迎だが、男はいらねぇんだよ!


「そのまま抱き潰しちまえ!」

「ぐっぎがっ、がああああああああぁ!」


 クソ、このハゲ、バカ力過ぎんだろ!

 腕の骨が折れる、腰の骨もやべぇ!


「水魔術:金剛ダイアモンド切断カッター!」

「させねぇ! 水の弱点は古来から雷だって決まってんだ! 雷魔術:包天牙ホウテンガ!」


 ズッガゴォォッォォォォッッ!!!


 水をまとった瞬間、雷で消滅しちまった!

 本物の雷が落ちた時みたな轟音で、耳もいかれちまう! 


「本当に、随分な魔術師さんだよ。しかし男で水魔術使いとは珍しいもんだ。実はお前、女だったりすんのか?」

「んな、わけ、ねぇだろうがッッ!」

「いやいや、女だ、だからこんなに弱いんだ。水魔術を使うなんて女以外ありえねぇ。女なら犯さねぇとなぁ……おい、ヴィッグ]

「あいあい」


 はっ? まさかこのハゲ、俺の尻に、なんか硬いモノが。

 いやいやいや! 俺まだ童貞なんだが!? 処女の方が先に無くなっちまうのか!?

 おおおおおおおっ⁉ 肛門ちゃんがグリグリ攻められてるんですがぁぁぁッ!?


「お前……結構可愛い顔してるなぁ」

「ふっざけんなハゲ! 死ね!」

「叫ばせてやるよ……アッーーーーー! ってな!」

「それどうやって叫んだんだよ! もう一回叫んでくれよ!」

「アッーーーーーーー! だ! 覚えたか!」

「もう一回!」

「アッーーーーーーー!」

「そんな叫び方、人間にできるかああああああぁぁ!」

「アッッツウウウウウウウウウウゥ!」


 炎魔術:人間竈

 限界まで燃えてやんよ……犯されるくらいなら全力で否定してやんよ!

 燃えろ俺の身体、全身くまなく燃え盛っちまえ!

 

「アギャアアアアアアアアアアアアァ!」

「燃えろ、燃えて燃えて灰になっちまえ! この女の敵が!」

「アアアアア! 兄貴、兄貴いいいいぃ!」


 けっ、ようやく離したか、全身くっそ痛かったんだが。

 このまま放置してりゃあのハゲは死ぬが、残念ながらティアの店が燃えちまう。

 

「水魔術:操舵水……不本意だが、誠に不本意だが助けてやる!」

「お前、水の他に炎まで使えるんだね」

「あん?」


 いつの間に後ろに女が。

 紫色の長髪、バニースーツみたいに上乳全開&下は超ミニ生足でやべぇ。

 めっちゃエロい、ふよんふよん揺れるおっぱいが目の前に二個あって、思わずむしゃぶりつきたく――――


「あがっ」


 やべ、油断した。

 首が、頸動脈が。おちる―――― 


「…………気絶した。トロイヤル、ヴィッグ、コイツ連れて帰るよ」

「ゴホッ、ゴホッ、あ、姉貴、俺、コイツ殺してぇ」

「ダメ、二つの魔術を使える人間なんて相当なレア。コイツは高く売れる」

「でも」

「なに?」

「……あいあい」


☆★☆★☆


次話『可愛い女幹部による性的拷問』

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