第三話 私の幼馴染は勇者様 ※ニーナ視点

 はぁ、はぁ、まったくもう、ユーティってば本当にバカなんだから。

 なんで私じゃなくってユナを見て大きくしてんのよ、おかしいんじゃないの。


「お姉ちゃん、さっきの男の人」

「え? ああ、うん……そう」

「え―!? じゃあさっきの男の人がユーティって人!? お姉ちゃんの一番大事な人なんじゃないの!? 大丈夫なの⁉ 思いっきり飛んでっちゃったけど!?」

「あはは……多分、大丈夫なんじゃないかな」


 なんだかんだいって、ユーティってばかなり身体鍛えてあったし。

 昔はぽよんぽよんのお腹の下に、可愛いのが付いてるだけだったのになぁ。

 筋肉も付いてたし、童顔だったのが大人びた感じになってたし。

 し、下も、かなり成長してたしね……あんな大きいとは、思わなかったけど。


「それにしてもさぁ」

「うん」

「ユーティ君、めっちゃカッコ良かったよね。お姉ちゃん結婚しないの?」

「結婚って……お姉ちゃん達には、ユーティ君に自分から手を出さないって協定があるからね」

「レミさんとティアさんと結んだ勇者協定だっけ? いいじゃんそんなの、無視しちゃえば」

「そういう訳にはいかないの……ほら、いつまでも裸でいると風邪ひくよ?」


 奇しくも十年前のあの日、私達は三人ともユーティの事が好きだって知ってしまった。

 話し合えば話し合う程、互いが互いを譲れない程に好きだという事も。

 

『私達三人の内、誰がユーティと結婚するか。それは、彼が決めるべきだ』


 当然と言えば当然の事だ、私達のワガママで彼を束縛なんか出来るはずがない。

 勇者協定、なんて大それた名前つけたけど。

 要は、自分からは告白しないという、それだけの約束事だ。


 それだけの約束事だけど……結構、制限大きいよぉ。


 さっきだって告白するチャンスだったんじゃないの?

 サプライズとか言っていきなり帰ってくるし、一番に会いに来てくれたし。 

 もう絶対ユーティって私のこと好きじゃん、私だって好きって言いたいよ。

 

 ……でも、大丈夫。


 ユーティは勇者を目指している、いつかはこの村を出て行ってしまう人なんだ。

 ティアとレミの二人は仕事の都合上、この村から出る事が出来ない。

 私は違う、ユナという跡取りが生まれてくれたから、いつだって出れる。


 彼の勇者の旅に付いていけるように、竜騎士の資格も取った。

 二人で空の旅にだっていける、サクシャラ槍術だって免許皆伝だ。


 二人っきりで長い旅に出て、手強い敵と戦ったり、ダンジョンに長く潜ったり。

 めくるめく冒険の果てに私達は強い絆で結ばれて、いずれは結婚、そして出産。

 ユーティとの子供かぁ……欲しいなぁ、絶対可愛いんだろうなぁ。

 

「お姉ちゃん」

「ん?」


 ユナが残り湯の少なくなった湯舟から立ち上がり、髪を手で絞りながら私を見る。


「知ってる? 私って勇者協定に入ってないんだよ?」

「そうね」

「つまり、私はユーティ君に手出し出来るってことでしょ? お姉ちゃん達が遠慮してるんなら、ちょっと頑張ってみちゃおうかなー? 想像以上にカッコ良かったし、お姉ちゃん達が狙ってるんなら、間違いなく良い人だろうし……あれ、お姉ちゃん?」


 妹のユナがユーティと仲良くする? 

 そういえば、ユーティってばユナを見て股間膨らませてたわよね。

 同じユから始まる名前だし、お似合いってこと?


「ユナ」

「え?」 

「お姉ちゃんね、彼と結婚したいの」

「う、うん、お姉ちゃん、目が座ってて怖いよ? 冗談だから、手首掴まないで!」

「邪魔する女は、例え妹だって容赦しないからね?」

「やめて! それ! 手首光ってる! きゃああああああああああああああああぁ!」


 水魔術:お漏らし、彼風に言うならスーパーミラクルウルトラオシッコビーム。

 ぶしゃああああああああああああああああぁ! って凄い音が浴室に響き渡る。

 さすがはユーティ、怪我させないで相手を痛めつけるには最適な魔術ね。


「あ、あう、あう……ひ、酷いよ、お姉ちゃん」


 ふん、生まれたての子牛みたいに腰をガクガクさせちゃって。

 良かったわねユナ、ここがお風呂で。

 ちょっとくらい汚れても、水で洗い流せるから、ね? 



☆★☆★☆



※水魔術教団元幹部、ユーティママ、ヒルネ先生の補足講座


 前作を読んでくれている読者様なら分かると思うんだけど。(超好き)

 この世界の水魔術は、素質がなくても女性なら誰でも使える事が出来ます。

 ただ、魔力、要はMPが無い人に関しては、体内の水分を消費する形になっちゃうのね。

 更には相手の手首を掴むことで、合体魔術として発動させる事も可能なの。

 しかも強制、嬌声じゃないからね? 間違えないように。

 

 優秀なウチのユー君は、五歳にして上記をマスターしてたの。

 そして付けた名前が『スーパーミラクルウルトラオシッコビーム』。

 私も喰らったけど、私ですら止めることが出来ない完璧な水魔術だったわ。

 初心者なら水を出せる場所は掌からのみになるけど、上級者は場所を任意に選べるの。

 ニーナちゃんはちゃんと勉強したのね、ユナちゃんの股間付近から出してる。偉いわぁ。

 

 とにかく、オシッコって名前が付いてるけど、オシッコじゃありません。

 あくまで体内の水分を魔力の代わりに使っているだけです。

 ここ、テストに出ますからね。ちゃんと覚えておくように!

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