第4話 真実
夢のような二週間からさらに二年の月日が流れ、わたくしは十七歳になりました。
ところで、セジヴィック公爵家という大きな後ろ盾を失ったうえに、逆賊のレッテルを貼られたわたくしは、実家の没落時点でカーティス殿下の婚約者ではなくなっていました。
このころ、やっとのことでカーティス殿下の婚約者の座に着いたのは、クラーラ・キャボット伯爵令嬢でした。貴族同士の駆け引きのせいで、新しい婚約者が決まるまでに三年もかかってしまったようです。
クラーラ様は幼いころからのわたくしの友人のはずでした。しかし、クラーラ様はお父様に濡れ衣を着せて死に追いやった張本人――キャボット伯爵の娘でした。
カーティス殿下との婚約を済ませたクラーラ様はわたくしのところへ来て仰いました。
「随分疲れているみたいね。綺麗なお顔が台無しだわ」
「……ご婚約、おめでとうございます」
「えっ、それだけ? 王太子殿下を奪ったら、もっと悔しそうな顔を見せてくれると思ったのに」
彼女は一体何を言っているのでしょうか。言葉が出ない私に向かい、クラーラ様は続けます。
「ずっとあなたのことが大嫌いだったの。銀色の髪もその青い瞳も聖女の力も家柄も、全部たまたま持っていただけのくせに。それがわからずに自慢するような馬鹿な女なら潰す気にもならなかったけれど、清廉な聖女様は違うんだものね」
ニヤニヤと笑いながらクラーラ様がはじめて見せた本音に、足が震えました。呼吸が浅く速くなって、息苦しくなっていきます。
「そうだ、お姉さまはお元気? お父様にあなたのお姉さまの嫁ぎ先を紹介したのはわたしなのよ。あの家の長男はとんでもない性癖の持ち主だと界隈で有名だったの。公爵令嬢だったころには想像すらできなかったほど興味深い暮らしをされているのではなくって?」
「…………!」
ひどいことを言いながら可憐に微笑むクラーラ様を見て、わたくしは言葉を失いました。まさか、お姉さまをあの状態に追い込んだのがクラーラ様で、原因となったのがわたくし自身だったなんて。
――お姉さまはそれから少し後に亡くなりました。身重の体で重労働をさせられた末に倒れたのだと聞きました。
助けられなかった自分を責め泣き叫ぶわたくしに、クラーラ様はわざわざやってきてこうおっしゃいました。
「いい気味だわ。私、いつもすましているあなたのそういうところが見たかったのよ」
その時、ギリギリを保っていたわたくしの中で何かが壊れた気がしました。
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