プロローグ 2
ヌルが受け渡されて数日の事
依頼を一時中断し王国の冒険者ギルドに戻ってきていた
「お前…ついに子供産んだのか…」
そう言葉を溢すのは左腕の無いギルドマスター
ひょろっとした外見で、髪も白髪になっているが、これでもまだ30代という若さと驚きだ
元Sランク冒険者で、過去にドラゴンと戦った際に腕を持っていかれた
そんなことより
「数日依頼で出てるっていうのに、子供なんてできるわけねぇだろ」
「つまり誘拐か?衛兵呼ぼうか?」
「待て待て、俺がそんなことするわけがないだろ、事情があるんだ」
依頼で向かった先での出来事を事細かく説明した。
話を聞いたギルドマスターは、最初は頷き、質問し、また頷き
聞き終わった後に深くため息をついた。
「はぁ~・・・事情は分かった。で、だ。例の依頼の件だが・・・」
「ああ、どうするか、だ」
今回の依頼、あんな森の奥に向かって探していた物
・
いや、探していた者
それが、あの母親と、この子であった。
依頼の内容はこうだ。
【ユグドラシルの守森に逃げ込んだ女性、
そして子を見つけ出し、捕縛及び連行しろ】
正直に言おう。
この依頼は受けたくなかった。
というのも、探していた女性の特徴や、なぜ逃げたかなどの詳細が一切なく、
ただこの依頼をしてきただけのものだった。
そして依頼してきた人物は、森の奥にある村の村長だった。
長年、王国を援助してきたこともあるが故に、ギルドとしても断り切れないということで
ギルドが指名依頼として俺たちのパーティに依頼してきたのが事の始まり。
だが、ギルドは逃げた女性と子は保護しようと考えていた。
噓の報告、これはギルド全体としての総意だった。
しかし、何故このような依頼をしてきたのか、これがわからない。
するとギルドマスターが
「この依頼、いや、あの村の情報をギルドの暗部から確認が取れた」
「あの暗部、偶には役に立つのね。」
「そう言ってくれるな。お前らが特別なだけで、本来は優秀な人財なんだぞ?」
エリーがこういうのも無理もない。
暗部が手に入れたいと思っていた情報より、俺たちが持ってきた情報のほうが
偶々多く、偶々有益だった。本当にそれだけの話だったのだ。
まぁ今回に限っては俺たちでも情報がわからなかったのは
あの村が隠蔽に隠蔽を重ねていたのがあるだろう。
「で、何がわかった?」
ギルドマスターは、少し沈黙した。そして意を決したように、そして目には憐れむような瞳で
「まず結論から。その子、ヌルはあの村における、【忌子】だ。」
「…なんですって?」
ドスの聞いた声で、エリーは怒っていた。
部屋全体、いや、ギルド全体を揺るがし、殺意が膨れ上がった。
これ、ギルドにいる奴ら、倒れたりしてないよな…
いや、確実に何人か倒れてるだろうな。
職員は耐えれるだろう、だが、新人や低ランクのやつらはもうだめだろうな…
「エリー」
「そう怒るのも無理はない、だが抑えてくれ」
「抑えろですって?ふざけんじゃないわよ、こんな子を、忌子扱いだなんて…!」
子煩悩というか、昔から子供が好きだったことはわかっていたが…
「いいから、その殺意を抑えろ。ヌルにも影響が出るだろ」
そう言ってチラッとエリーが抱えてるヌルを見るが…
ものの見事にスヤスヤ寝てらっしゃいますね?
将来大物になるな、この子。俺でも怖いって思ってるのに。
「とりあえず、だ。まず経緯だがーーー」
色々と情報を手に入れて長ったらしく説明してるが
要約するとこうだ。
1その村はエルフの血を入れようとしていた。
2魔力を多く持つ女性と、エルフを交配すれば、強い子が生まれると予測していた。
3だが生まれたヌルは、普通の人間だった。
たったこれだけの理由で、忌子として扱ったらしい。
これは…
「ギルドマスター」
「ああ、国の上層部にもこの話は通している。あの村には近々調査が入るはずだ。」
「ならいいか…?まぁ国も馬鹿じゃないだろ。しっかりと調査してくれればいいさ」
「そうね…。あ、あと言い忘れてたわ」
怪訝な顔をしていたエリーは、思い出したかのように満面の笑みを浮かべる
「私たち、結婚するわ。それと、この子は私たちで育てる」
ギルドマスターは一息ついて飲んでいた紅茶を噴出した。
おい、俺にかかっただろ、きたねぇなおい
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