一人かくれんぼ
「一人かくれんぼ」という降霊術はご存知だろうか。
あるルールに従ってすすめていくと、霊を降ろすことが出来る、「こっくりさん」のようなものの一種だと思って良いだろう。
もちろん危険度は段違いだが。
当時大規模掲示板のオカルト板にて大流行していた。
面白そうだと仲間とやってみることにした。
【必要な物とルール】
・用意する物
手足のあるぬいぐるみ
ぬいぐるみのお腹に入る程度のお米
縫い針、赤い糸
爪切り(自分の爪)
包丁や、カッターナイフ
コップ一杯の塩水
・進行方法
時刻は午前三時
ぬいぐるみに名前を付ける
腹を裂いて詰め物を全て出し、用意したお米と自分の爪を入れる
赤い糸で縫い合わせる
自身の隠れ場所を決めておき、そこに塩水を準備しておく
ぬいぐるみに対して「最初の鬼は(自分)だから」と言い、水を張った浴槽にぬいぐるみを沈める
家中の電気を消し、テレビだけつけて砂嵐状態にしておく ※現在は地上デジタルの為砂嵐は存在しない
刃物を持って風呂に行き、「〇〇見つけた」と言って刺す
「次は〇〇が鬼」と言い、自分は塩水を用意しておいた隠れ場所に隠れる
・終了方法
塩水を口に含み、ぬいぐるみを探す
コップの残り水、口に含んだ水を順にぬいぐるみにかける
「私の勝ち」を三度宣言
この行程を二時間以内に終了させる
使用したぬいぐるみは、必ず燃える方法で処理
当時の私は24歳、その時私は結婚をしていたが妻とは別居していた。
まだスマホも出始めの年、私はガラ携で大規模掲示板の閲覧が趣味となっていた。
そこのオカルト板で大流行し、実況スレッドが多数立ち上がる話題があった。
それが「一人かくれんぼしてみた」だった。
オカルト大好きな友人が早速興味を持つ。
「やろう笑」
休みに集まり、当然の流れで私が実行することになる。
午前三時
まずは流れの通り進行して行く。
私が用意したのは外国の女の子のぬいぐるみ。
お腹の綿を抜き、お米と私の爪を入れる。
その子には「まちこ」と名付けた。
最初の鬼は縁凜だから
最初の鬼は縁凜だから
最初の鬼は縁凜だから
浴槽にまちこを沈めた。
既に家中の電気は消してある。
一軒家に一人で住む友人宅。
友人は車で待機。
広い家に私一人。
テレビを点け、砂嵐にする。
既に色々いるが、私は気にしない。
目を瞑って10秒数え、包丁を持ってまちこの元へ。
「まちこ見つけた」
持ってきた包丁でお腹を刺す。
「次はまちこが鬼だから」
古い建物の二階にある和室の押入に隠れる。
カビ臭い。
湿気をたっぷり吸った布団と、大量の荷物が入っていた。
そこに一人分のスペースを作って入っている。
何分経っただろうか。
コチ・・・コチ・・・コチ・・・
時計の針の音が聞こえる。
ふと気付く。
砂嵐の音が聞こえない。
隙間から覗くとテレビは点いている。
「来たかな・・・」
階下で何か物音が聞こえる。
ガタガタと何かが揺れる音。
冷静に考える。
私は今この家に一人だ。
途端に恐怖感が襲う。
ギシッ・・・
階段の音。
ギシッ・・・ギシッ・・・
登ってきている。
二階は左右に二室。
私がいる部屋と、向かい側に友人の寝室。
カタカタカタ・・・
向かいの部屋の襖が開いた。
静か。
カタカタカタ・・・
再び襖の音。
向かいの部屋の襖を閉めたのか、こちらに入って来たのかわからない。
ヒタ・・・ヒタ・・・
畳を踏む音が聞こえる。
こちらだった。
隙間を覗く。
いる。
何かが。
足だけが歩いている。
一通り部屋の中を歩き回り、部屋から出ていく・・・と思ったが、出る前に立ち止まった。
急いで口に塩水を含む。
私は隙間から足の行方を追っていた。
まだ部屋の入り口に立っている。
「見つけた」
どこからか声が聞こえた。
部屋を見渡すが他には何もいない。
入り口を見ると足も無くなっていた。
急激に背筋に冷気のようなものが走る。
後ろだ。
何かいる。
ゆっくりと振り返る。
真っ暗な中に目が二つ浮かんでいた。
私一人が入れるスペース。
後ろは大量の荷物。
コップを握り、いそいでまちこの元へ。
まちこは階段下に落ちていた。
何故。
そんなことはどうでも良い。
行程通り口に含んだ水、コップの水を掛けた。
私の勝ち
私の勝ち
私の勝ち
時刻は4時半。
電話で友人を呼ぶ。
起きた事を説明。
目を輝かせて聞いている友人。
「あれ?包丁は?」
忘れていた。
風呂を見に行き、浴槽を覗くが無い。
部屋中探すが見つからない。
最期に私が隠れていた部屋を見る。
私が座っていたスペースの後ろ。
荷物と荷物の間に、刃が私を向いて置かれていた。
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