何者かが近付いてくる夢
小学生低学年の時。
私の霊障に対する抵抗力が、まだ不十分だった頃。
一週間に渡ってみた夢があった。
【一夜】
その頃住んでいた家は、周りが田んぼに囲まれた古い借家。
敷地から出ると左右にどこまでも続くような砂利道が伸びていた。
夢の中でも私はそこに立っていた。
何をするつもりで外へ出たのか。
何もわからず立ち尽くしていた。
右を見るとかろうじて認識出来る程遥か遠くに黒い服を着た人が立っている。
それに気が付いた時に目を覚ました。
【二夜】
その日も同じ場所に立っている。
同じように立ち尽くしており、やはり右を見る。
今回も黒い服を着た人が立っている。
前回よりも少しだけハッキリ見えるようになった気がする。
黒い傘を挿しているようだが、私が立っている場所は晴れている。
服装は半袖。
【三夜】
また同じ夢。
いや、同じではない。
雨が降っている。
だが同じ場所に立っている。
同じように右を見ると、やはり黒い服の人が立っている。
霧雨が降っており薄暗い為見え辛い。
だがそれはそこにいる。
【四夜】
その日、寝る前に祖母に相談した。
「毎晩同じ夢を見るの。家の前に立ってて、右を見ると誰か立ってて、雨が降って・・・」
説明になっていない説明をしたが、祖母は頷きながら聞いてくれた。
「うんうん、ばあちゃんが見ででやっかんない」
とても安心して眠りについたのを覚えている。
そしていつもの場所に立っている。
霧雨も粒の大きな雨に変わっている。
右を見ると、男が立っている。
男?
性別が判別できるくらいまで近付いていた。
ある程度の年齢になってから気付いたが、その男が着ていたのは喪服だった。
【五夜】
その頃から寝る前になると、祖母が近くにいてくれるようになった。
とても安心感があり、温かい手を胸に置いてもらいながら夢の中へ。
目を閉じるともうそこはいつもの風景。
びしょ濡れになりながら私は立っている。
変わっているのは男との距離。
そして、男は傘をたたんで捨てた。
男もびしょ濡れになって立っている。
【六夜】
寝るのが怖かった。
駄々をこねても母は怒るばかり。
祖母は優しく「大丈夫だがらない」と言って、私を安心させてくれる。
今日も雨。
いつもよりも薄暗い気がする。
空を見ると真っ黒な雲が空を覆っていた。
空?
いつもと違う。
視野の端にもう立っていた。
黒い服の男。
びしょ濡れであと数歩の所に立っている。
初めて表情を見た。
目を大きく開き、真っ白な顔、赤々とした唇から大きく歯を見せて笑っている。
【七夜】
その日、祖母は白装束に数珠を握りしめていた。
いつもは家族全員横並びで寝ているのだが、その日私は別室で祖母と二人で寝かされた。
布団の四隅には白い皿に盛られた塩。
幼いながらも、只事では無い事だけは感じていた。
夢の中で私は俯いていた。
何故。
もういるのだ。
隣に。
下を見ている私の目に、男の下半身が映っている。
息遣いも聞こえる。
私の頬に息も掛かっている。
その時男が何かを呟いた。
「・・・・こう・・・」
「え?」
と振り返る。
目を大きく開いて真っ直ぐ私を見ている、真っ白な肌、大きな真っ赤な唇から大きく歯を覗かせて笑うあの顔が鼻が当たる距離にあった。
その瞬間
「〇っちゃん!!」
私を呼ぶ祖母の大きな声が響き、夢から覚めた。
汗だくの祖母が、「もう大丈夫だがらな」と笑いました。
訳も分からず泣きじゃくる私。
右腕には大人の男性に握られた跡がクッキリと残っていた。
ある程度の年数、強い遺恨、未練等を残して逝った方は、稀に自由に動ける力を得るようだ。
亡くなった際、一番強く感じていた感情がそのまま霊体となるようで、所謂悪霊というものはそのように生まれるのだとか。
いつの間にか動けるようになった、遺恨も未練も無いが、亡くなったことに気付いていない方。
こちらは元人間。
やはり人に気付いてもらえない、無視をされていると思う。
ならば驚かしてあげよう!
こうやって心霊スポットや家で体験する方も多い。
元人間だ、やはり屋根のある場所にいたいのだろう。
では、今回のは何だったのか。
悪霊と言われる類のものだろう。
何故なら私が何処かに連れていかれる所だったからだ。
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