夜中のトイレ

中学二年生の頃だったか。


私が住んでいたのは古い町営の住宅。


トイレも古かった。


今では知らない世代も多いのではないだろうか。

水洗でも洋式でも、もちろんウォシュレットなんて物も無い。

汲み取り式の和式トイレ。

というか便所。


その日も寒く、古い建物は外気とほぼ気温差が無いのではないかという程寒い。


夜中に便意を催し、襖を開けて階下へ。


電気を点けても薄暗い階段、そして廊下。


奥にトイレ。



キイィ・・・



シチュエーションに合った不気味な音に少々苛立ちを覚えながら、スウェットを下ろしスタイルに入る。


その頃携帯電話などというトイレのお供は無かった為、一冊週刊少年ジ〇ンプが置いてあった。


読みながら過ごしていると、視野の下端に何かが見えた。



下を見て便器を覗く。



顔。



女性の顔。



無表情にこちらを見ている。



「ふざけんなよおおおぉぉぉぉぉ!何て所に、なんて時に出るんだよおおおぉぉぉぉ!!」



尻も拭かずにトイレを出た。


「何騒いでるの!!」


母が階段の上で仁王立ちしていた。

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