シャワーを浴びて

中学生の頃。


まだ私が見えるだけ・・・の頃。


部活から帰り食事を済ませ、当時宮城では深夜に放送していた「新世紀エ〇ァンゲリオン」を見るために仮眠を取ろうと早めに入浴した時の話だ。


当時私が住んでいた家は、宮城に転居してから住んでいた町営の住宅。


築年数は古く、隣と壁が繋がった、長屋のような造りの家。


浴室の入り口も曇りガラスが入ったベランダの窓のようなアルミサッシ。

コンクリート造りの壁と床に、浴槽と追い炊き機能付きの後付けガス給湯器が置かれていた。


頭を洗う為、冷たいコンクリートの床に置かれた椅子に座り、シャワーで頭を流していると後ろから気配が。


気にはなりながらもシャンプーをしていると



シイイイイイイイイイイイイイ・・・



曇りガラスを爪でなぞるような音が響く。



ビクリと身体を震わせながら振り返るも何もいない。


怖くなり、目を開けながら泡が目に入るのも気にせず流していた。


目の前の鏡を見ながら。



カラカラ・・・



サッシ戸が勝手に開く。


振り返っても何もいない。


鏡を見ると、何かが一瞬動いた。


鼓動が早くなったのを覚えている。



宮城の冬は寒い。


断熱材とは無縁のコンクリート壁と床から伝わる冷気。


ブルブルと震えて浴槽へ。


「ぐああぁあぁあぁぁぁあ・・・」


と、中学生とは思えない声を上げながら入浴。


温まってくるのを感じ、少し汗ばんで来た頃にはもう先程のことは忘れていた。


(今日は何の話だったか・・・)


新世紀エ〇ァンゲリオンを思い出しながら目を閉じていた。


そろそろ上がろうかと目を開く。



開いた両足の間、湯に漂う黒く細長いもの。


海藻、そんなわけない。


わかっていた。



髪の毛だ。



女性の長い髪の毛だ。



身体が固まる。


金縛りではない。


人間の本能。


「動いてはいけない・・・」



「それ」が先に動き出した。


湯の中で方向を変え、頭頂部が奥へ動いていく。


ということは。



ユラユラ揺れる髪の毛の間に、唇が見えた。


口を開き、何か話している。



見・・・え・・・て・・・い・・・る・・・ん・・・だ・・・ろ・・・う・・・



危険を感じ飛び上がり、身体も拭かずに居間へ戻った。


「濡れたまま出てこないでよ!!」


母に怒られたが、そんなことはどうでも良い。


家族は私の言うことは信じない為、何も言わず自室へ戻った。


布団に入り、朝を迎えた。


新世紀エ〇ァンゲリオンは見逃した。

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