自転車の荷台に

中学生の頃の冬。


20時頃に友人宅からの帰路。


一人で自転車を漕いで川の横を通る道。


私が住んでいた町は駅も無い田舎町。


メイン通りも人一人歩いておらず、街灯同士の間隔も灯りが届かない程離れていおり真っ暗なのだ。


流石に気味悪さを感じながら漕いでいると「ドン」と後ろに何か乗ってきた。



右向きに振り返る。



歳の頃は80代だろうか。


人とは思えない大きさの目の中の瞳が完全に上を向いている。


口を大きく開き、真っ黒な闇が広がっていた。


怖いというより、驚いて立ち漕ぎを試みる。


当時カマキリハンドルというものがあり、それを絞るカスタムが流行っていた。


無理やり絞っていたもので、強度が落ちていたのだろう。


立って力を入れた瞬間、ハンドルが右側に折れて派手に転倒。


ふと気付くとそれは既に姿を消していた。



数日経った頃、私が住んでいた町営住宅で、老人の孤独死が発見されることになる。


田舎の近所付き合い。

線香をあげに行く。


遺影にはあの晩のお爺さんが写っていた。

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