中国のホテルにて

19歳の頃、仕事で中国に滞在していたのだが、滞在先のホテルで体験した話だ。


新規事業立ち上げのスタートメンバーとして、今後の経験として私も派遣メンバーとして組み込ることになる。


そこで宿として使用していたホテル。

日本のホテルとは雰囲気も異なり、古いホテルだったが、掃除は行き届いており、それなりに快適に過ごしていた。

ベッドや調度品も古さは感じるが、数ヵ月暮らすには不満は無い。

隣に美味しい食堂もあり、言葉もなんとか通じた為、食事にも困ることは無かった。



ただ一つ。


どうしても気になることがあった。


音が鳴りやまないのだ。


足音や壁を叩く音。


私も若かったのもあるが、「外国だし、こんなものだろう・・・」と諦めていた。



ヒソヒソヒソヒソ・・・



中国語で何か囁く声も漏れてくる。



ある日、クタクタで帰ってきてエレベーターに乗り、私の部屋がある階を目指す。


そこはエレベーターを降りると正面に壁。

左手は行き止まりで窓がある。

右手を向くと真っ直ぐの廊下からT時で左右に客室が分かれる造りのフロアだ。



エレベーターを降りて右を向く。



廊下を顔が歩いている。


歩く?


違う。


右から左へ滑るように首から上だけ廊下から出して横切っていった。


女性。



(やっぱりいた・・・)



私の部屋はその首が向かった方向。

三部屋しかない為、三分の一でその女がいる。


(いたら面倒だな~)


と考えながら、自室の扉を開けた。




扉を開けて真っ直ぐ見るとテーブルが見えるのだが、そのテーブルの下に丸い黒いものがある。


私が立ち尽くしていると、ゆっくりこちらを振り返った。



ニヤァ・・・



と笑いながら、こちらへスーッと向かってきた。


急いで扉を閉めて、一階下の先輩の元へ向かおうとすると、エレベーターが上がってくる。


扉が開くと真っ青な顔をした先輩。


「あの・・・!あれだ・・・!えっと、あれ!」


とりあえずエレベーターに乗り、隣の食堂へ。


話を聞くと、天井から下半身が生えていて、それが先輩の部屋へ入っていったそうだ。


そこで扉を開けたら



バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ・・・



と足をバタつかせ向かってきたとのこと。


どうやら上階と下階で一人だったようだ。



国が変わると、霊の脅かし方も変わるものだ。



余談だが、この女性の霊以外にも色々出た。


シャワーを浴びている時に後ろから「你好(ニーハオ)」


ベッドの股の間に顔を出して「你好(ニーハオ)」


カーテンを開けたら女性が落ちてくる。


エレベーターに乗っていたら、いつの間にかもう一人。


クローゼットを開けたら裸の男。


毎日毎日出てきて、疲れて帰ってきたら上の最後だ。


中国語で何か言い訳していたが、さすがに怒りが頂点を超えて



「ふざけんなよ!お前ら全員○すぞおおおおおおお!」



とバリバリの日本語で叫ぶと(既に○んでいるが)、その日から女性が一人立っているだけになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る