着いてくる

10代の頃。

素敵な女性と夜のデートを楽しんでいる時。

女性から心霊スポットに行きたいと度々希望されることがあった。


そんな中から短い話を二つ。



【M県T樽公園】


その日も二人で食事を済ませ、そろそろ帰ろうかと提案したところ。


「心霊スポットに行きたい」


とのこと。


最寄りに思い当たる場所があった為、そちらに連れていくことにした。


そこは海沿いにある大きな駐車場。

道路を挟んで堤防を越えると、公園になっている。

日中訪れると、潮の香が漂い、波の音が聞こえる、素晴らしい公園。

トランペットやバイオリン等、楽器の練習にも使われる、人が住む処からは離れた所にある場所。


夜になると途端に近付いてはいけない空気が漂う場所になる。


その公園には一つ謂れがある。


駐車場の奥にあるトイレで女性が無残な姿で発見されたとのこと。

よくある話。

夜に訪れると、その女性が駐車場に立っており、追いかけてくるそうな。

確かに、想像すると怖い。


左右に田んぼが見える道をしばらく走り、県道から公園へ続く道へ入る。

そこから林を抜けると駐車場が見えてくる。


街灯は疎ら。


あの当時はLEDなんて物は無かった為、黄色味掛かった薄明るいスポットライト。


駐車場は真っ暗。


奥にあるトイレは照明が点いており、怪しく光っていた。


駐車場の入り口とトイレの間。

真っ暗な場所に車を停める。



「あそこで発見されたんだよ」



「え~、やっぱり帰ろう・・・」



(は?)



「じゃあ、帰ろうか・・・」



コン・・・コン・・・



(来た・・・)


立っていたのはわかっていました。

その他にも車はあったにも関わらず、何故私の車に・・・。


「何の音?」


「気のせいでしょ」



コン・・・コン・・・



「ほら!気のせいじゃないよ!早く帰ろう!」


「わかったわかった・・・」



コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン・・・



女の子は絶叫。

私もさすがに驚いた。


助手席に座る女の子のすぐ脇。


ガラスにべったりと張り付き、窓を叩く血だらけの女性。


ギアをドライブに入れ、アクセルを踏み込む。



「見えてるだろ・・・」



どこかから誰かもわからないが聞こえる声。


女の子も聞いたようだ。

その後一切言葉を発することが出来ず、車を走らせる。



「見えてるだろ・・・」



(え?)



ハンドルの下。


私の足の間。


さっきの女が顔を出していた。



【M県Sトンネル】


その日女の子と夜のドライブを楽しんいた。


「あそこの道に入るとトンネルがあって、トンネルの中でヘッドライトを消して、ホーンを三回鳴らすと何か起きるんだってよ」


どこにでもある話だ。


「行こう行こう!」


女の子は乗り気だ。


道を逸れ、トンネルへ向かう。


長いトンネルではない。


すれ違うのもやっとなくらいの道幅。



トンネル中程で車を停め、ヘッドライトを消す。



ファー!ファー!ファー!



クラクションを鳴らす。



「何もないね」


「行こうか」


ヘッドライトを点灯し、車を走らせる。


トンネルを抜けると踏切がある為、街灯がひと際明るく照らされていた。


車をそこまで走らせる。


街灯が社内まで照らした時。


ビッシリと手形がフロントガラスに付いているのがわかった。




女の子は絶叫。


車を降りてガラスを拭くが手形が取れない。


よく聞く怖い話では、こういうのは拭いても取れないと聞く。


(ん?)


違う。



これ、全部中から付いてる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る