ロフトから覗く影
今回は私が以前勤めていた会社に入社し、最初に配属された店舗の寮で体験した話。
私が一番年上ではあったが、その職場では先輩となる方々三名と暮らしていた。
その時複数回体験したのたが、その時の一つ。
配属初日。
勤務はせずに部屋で荷物の整理をして良いと言われ、先輩一人に部屋へ案内していただいた。
言葉数は少ない。
年上の後輩ということで緊張しているのか?
そう思っていた。
その店舗の寮は変わった造りをしており、一階が店舗。
二階が寮になっていた。
外階段を昇り、寮に入る。
顔だ。
古いテレビ台をご存知だろうか。
木のラックにガラス扉。
入り口の正面にそのテレビラックが置かれている。
そのガラス扉の中に、横向きになった男の顔。
何処を見ているかわからない。
「縁凜さんに使っていただくお部屋はこちらです」
どうもおかしい。
寮の入り口を入ってすぐに居間。
共有スペースから逆L字の形に部屋があり、縦に三部屋。
横に二部屋。
男三人が縦三部屋に住んでいる。
横二部屋は空き部屋。
その横二部屋のうち一部屋が私に充てられた。
案内してくれた先輩は仕事に戻り、私一人になった。
私は共有スペースから見て、手前の部屋を選んだ。
荷物を解き、整理していく。
六畳間でロフトのある部屋。
男一人の荷物の為、そんなに多くはない。
19時。
寮は真っ暗になっていた。
その時、隣から・・・
コン・・・コン・・・
(ん?)
明らかにノック。
始まりだった。
仕事が始まり何日か経った。
慣れない仕事に、毎日ヘトヘトになりながら帰宅。
食事を済ませ、シャワーを浴びて布団に入る。
私が寝ると、毎日のルーティンがあった。
午前一時。
気配を感じ、目を開く。
ロフトを見上げると、何か黒い塊が揺れている。
ゆら・・・ゆら・・・
ぬっと止まると、真っ暗な中に真っ黒な塊だが、明らかにこちらを見ている。
真っ黒な中に、目だけが浮かび上がっている。
初日は流石に固まった。
じわりと脂汗が滲む。
何日か経ち、もう慣れてきたころ。
それは来た。
時刻は午前三時頃。
ロフトから見つめられながらも眠りに入る。
その時、鍵を閉めているはずのドアが開いた。
ザッ・・・
月明りで少しだけ明るい部屋外が見える。
その時人の形をした黒い塊が顔を出した。
顔なのかは見えないが、顔だと認識出来た。
金縛りにはなっていなかった。
指は動く。
だが動いてはいけない気がした。
身体全体が見えた。
ゆっくり・・・
ゆっくり・・・
近付いてくる。
私のベッドの真横まで来ると、ピタリと止まる。
横目で見ていると、身体がこちらに向き直る。
グググッと身体を折り、顔?を近付けてくる。
しばらくそのまま見つめられ、ゆっくりと戻っていく。
律儀にドアまで閉めていく。
半年住んだが、毎日繰り返されていた。
目的は謎。
先輩達はそれを知っていた。
だが私は気にせず(気にはしていたが、何も言わず)暮らしていた。
そんなお話。
皆さんのお部屋、ロフトはありますか?
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