公園
今回は怖い話が苦手な方でもお読み頂けると思われる、公園に纏わる軽めな短編を二本。
【見つめる女】
高校二年生の夏のある日。
当時新しく購入したバイクで走り回っていた。
時刻は18:00。
薄っすらと暗くはなっていたが、まだ明るい季節。
川が見下ろせる堤防の上が走れるようになっており、夕焼けが綺麗で好きな道。
川を右に見て反対。
堤防から町側に公園を見下ろす所に差し掛かる。
この公園、少々曰くがある。
よくある話だ。
公園内のトイレで、ある男によって女性が悲惨な最期を遂げたとのこと。
バイク乗りの間では、ある時間に通りかかるとエンジンが止まり、公園から女性が見ている・・・という話。
その時間とは、18:00・・・ではなく20:00だった為、安心して通過していた。
ゴボッ・・・ゴボボボ・・・
急な不調を起こし、エンジンが回るのをやめてしまう。
いや、不調ではない。
原因は恐らくあれだろう。
左側から感じる、腐敗臭を伴う気配。
その公園は林になっており、木の開けた場所が広場、端にトイレがある。
いる。
女性。
最期のままの姿なのだろう。
トイレから少しだけ出た所。
恨みの表情を浮かべ、まっすぐこちらを見ている。
明らかに悪い方の霊なのは、全身の鳥肌と直感が教えてくれていた。
薄れていく意識を気を張り耐える。
なんとかバイクを押し、全力で走った。
しばらく離れた所でセルを回すと、轟音と共にエンジンがかかった。
その後無事に帰り、後輩達には更に盛りに盛って話しておいた。
それからはそこをバイクで通る者は、めっきり少なくなったそうな・・・。
【ぶら下がる男】
M県T観音公園。
その公園は小さな山の中にあり、少々山道を走り駐車場へと入る。
季節は夏。
若い男女が集まると・・・やはり恒例行事は行われる。
その公園も曰くがあった。
遊歩道のすぐ脇の木の太い枝にロープをかけ、スーツ姿の男性が首を括ったとのこと。
時刻は0:00。
街灯も消えていた。
駐車場に車を停め、遊歩道を歩き始める。
私にはすでに見えていた。
懐中電灯の照らす先に、ぶら下がる足。
だが他のメンバーはもちろん気付いない。
もう真下まで到達する。
私は懐中電灯を持っていなかったのだが、そのぶら下がったものを、足からなぞるように見上げた。
その目はしっかりこちらを見つめていた。
表情は無。
真っ暗なはずなのだが、懐中電灯の光も、月明りも届かない森の中なのだが、はっきりとこちらを見ているのがわかった。
その後私がいないことに気付いた友人たちが絶叫と共に戻ってきた為、皆を怖がらせようと駐車場まで絶叫しながら逃げ、先程見たものを駐車場で全て話す。
「もう帰ろう・・・」
車に乗り込み帰路につく。
動き始めた車の中から後ろを振り返ると、揺れる足がまだ見えていた。
ゆらゆらと。
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