トイレの窓から

あれは小学校の二年生の頃だったか。

その頃に家族で住んでいた家はとても古く、トイレと風呂が屋外にあるような造りになっていた。

夜は怖くてとても一人では行くことが出来ず、いつも母に着いてきてもらっていた。


田舎の古いトイレはブロックがそのまま壁になっており、立ってする方の目の前には明かり取り用の小さな窓。

目線を下げて便器。

足元には換気のための20cm程の隙間が空いている。


その日は昼間。


トイレに行きたくなりいつもように外へ出る。


太陽が真上に昇った時刻くらいだった為、何も考えず用を足す。


目線を便器に落とし、何気なく足元の隙間を見ていると外が見える。


光が入ってきているため安心しきっていた。


考えることは虫が入ってこないかだけだ。


用を足しながら、顔を上げて曇りガラスの窓を見る。



男が立っている。


曇りガラスにべったり顔を近付けて。


表情がわかる。



考えてみて頂きたい。


下の隙間を私はずっと見ていた。

人が近付けば影が出来るか、この距離ならば足が見えるはずだ。


以前弟にいたずらをした時には、足と影で事前にバレていた。


顔を上げて窓を開けると誰もいない。

トイレを出て敷地内を見ても誰もいなかった。


その日は私一人での留守番。


人間だったのか、それとも。

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