東日本大震災 津波

今回は表題についての短い話を二つ書いていこう。



2011年3月11日、未曽有の災害に見舞われた日本。

私は当時宮城県の大崎市で仕事中に被災。

震度7強。

誇張ではなく、「あ、日本終わった・・・」と半ば諦めに似た感情を抱いたのを憶えている。

帰宅途中で車のワンセグで流れる仙台空港の映像では・・・旅客機が流されている・・・。

津波による被害は、一ヵ月後電気が復旧してから知ることになるのだが。

今回はその当時に体験した話。




【逃げている】


亡くなって間もない方というのは、亡くなる直前の記憶を何度も何度も・・・繰り返すという。

所謂、地縛霊となる直前の状態。

地縛霊となるにはそれから更に長い時間をかけて・・・。


震災から一年後の真夏、ツーリングの帰りに当時の「野蒜(のびる)駅」で休憩をしていた。

現在では震災遺構として保存され、仙石線野蒜駅はもう少し内陸へ移されている。


缶コーヒーを飲みながら煙草を吸っていると・・・。


駅正面にある橋の向こう側から犬を抱いた中年女性が走ってくるのが見えた。


ニット帽を被り、ダウンジャケットを着て、マフラーと手袋をしている女性。


真冬の格好だ。


その顔は必死な表情。


何かから逃げているような。


(あぁ、そうか・・・)




【津波で流された町からの帰りに】


私の親戚の家も津波による被害があり、家は流されはしなかったのだが、瓦礫や運ばれてきた土で、とても生活出来る状況ではなくなっていた。

私の職場も甚大な被害を受けていたため、しばらく休みとなった。

その時間を利用し、片付けの手伝いに訪れていた。


早朝から行き、電気が通っていない為17時くらいまで作業。

自宅までは約2時間、のんびり帰ることに。


しばらく走っていると、久々の肉体労働のせいかコクリコクリと眠くなってきてしまう。


雪国には道路脇に広いチェーン脱着スペースがある所がある。


良いタイミングで発見したため、停車し仮眠を取ることに。


車を停めシートを倒す。


程無く眠りについた。


何分寝たか・・・気付かぬうちに私の車の前にも一台の軽自動車が停まっていた。


忙しそうに車に荷物を詰め込み、4人家族だろうか、車に乗り込んでいる。


動向を見つめながら、再び睡魔に襲われ、シートに身を委ねることにした。


起きてみると午前4時、どれだけ疲れていたのか。


煙草を一本吸い、頭がスッキリしているのを確認。


ヘッドライトを点灯させ、出発しようとすると



ガラスは割れ、車体がグシャグシャに潰され、車体脇には大きく○の文字。



そこにあったのは津波で流された車であった。


(あぁ、そうか・・・)

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