遺影

中学生の頃はまだ見る見ないをコントロール出来ていなかった為、毎日のようにこの世のものではないものを見ていた。


その時の不思議な話。


怖い話ではないかもしれない。

ただ不思議な話。


あれは中学二年の夏、暑い夜だった。


その日は友人の曾祖母に当たる方の年回忌法要。

友人の家に親戚一同が集まっていた。

その時の私と友人は、そんな空気も読まず、いつも通り遊んでいる始末。


親戚の皆さんとも何故か仲良くなり、夕飯にも同席させていただく。

調子に乗り、勧められるがまま・・・麦とホップの炭酸飲料を飲む。

そんな楽しい時間。



ボトッ・・・


ん?


私とその家の家主である長男が気付いた。

「何の音だ?」

私は首を横に振った。


気のせいか・・・とまた飲み始める。


皆さん良い感じに出来上がってきた。

まだまだ夜は長そうだ。



ボトッ・・・



ボトッ・・・



今度は親戚中の長男に当たる方全員が聞いたようだ。

「なんだ?やっぱり聞こえるな?」


私が廊下に出て見回してみるが、電気も点けていない、田舎の田んぼの真ん中にある家の為真っ暗。

月明りで薄っすらと見えるため、そのまま見回り居間に戻る。


「なんかあったか?」

特に異常も見受けられなかったと報告する。


それからしばし時間が経過し、先程のことも忘れていた折。



ボトボトボトボトボトボトボトボトボト・・・



いよいよその場の全員に音が聞こえた。


「ダメだ、見に行ってくる」


家主が二階にあがり、私達は一階を捜索。



これだ。



廊下を挟んだ仏間。



私が電気を点灯させる。



部屋の隅、畳の上に広がる血液。



聞いた音は、畳の上に液体が落ちる音だった。



血痕が広がる場所から顔を上げる。



曾祖母の遺影。



首の辺りから血が溢れていた。



遺影から。



長男に確認すると、脳のご病気で寝たきりとなっていたが、首を搔きむしってお亡くなりになったとのこと。



「寂しがりだったからな・・・俺らが騒いでんのにやきもち焼いたんだべ・・・」

家主が呟く。



時刻は23時14分。



曾祖母の亡くなった時間だそうだ。



そんな夏の暑い夜。

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