第一発見者
私が高校二年生の頃の話。
だんだんと霊を見る、見ないをコントロール出来るようになってきた頃だったか。
宮城の11月、夜は急激に冷える。
その日もとても寒い日だった。
そんな折、ある夢を見ることになる。
その日も部活の厳しい練習で、疲労困憊で帰宅。
食事とお風呂を済ませ、23時には就寝。
昔から疲れてはいるが寝付きは悪かった。
ゴロゴロと思春期特有のつまらないことを考えているうちに、うつらうつらと眠りについた。
苦しい・・・
橋が見える。
見覚えのある橋。
通学の際、毎日通っている。
私が当時住んでいた町は駅もなく、人口6000人程度、川沿いに沿っている細長く小さな町。
川の傍には高い堤防があり、町の両端には隣町に渡る橋が架かっている。
その北側に架かる橋の堤防を降りた所が見える。
当時私の仲間達と遊んでいた場所。
苦しい・・・!!
こういったことはよくある。
あるのだが、今回は強く呼ばれている気がする。
スウェットの上下にダウンジャケットを羽織り、バイクに跨りエンジンをかける。
時刻は午前3時。
自宅から10分。
橋に到着。
堤防の上にバイクを停め、下に降りていく。
懐中電灯を忘れたが、幸いにして月の光が届いていた為、橋の下までよく見えた。
そして月明かりは、何かがぶら下がる姿も照らしている。
どうなのだろう。
あまりリアルに描きすぎると問題があると思われる為、ある程度割愛しながら描いていく。
ぶら下がっている。
人が。
ゆらり、ゆらりと揺れながら。
恐らく首を吊り自ら命を絶ったのだろう。
悲惨なものだ。
もし私が自分で命を絶つことを考えたなら、首吊りだけはやめようと思わせるくらいに。
ポケットからPHSを取り出し、警察を呼び救急車を要請。
程なくして警察到着。
第一発見者、重要参考人として話をあれこれ聞かれ、その日も学校がある為、後日また署で話をするということで開放さた。
あれから一ヵ月程経過した日。
毎日繰り返される寝付きの悪い夜。
寂しい・・・
橋が見える。
普段は通らないが、小学生の頃に友人と駆け回った橋の下だ。
今度は南側に架かる橋。
寂しいよ・・・・
若干の面倒臭さと、前回の煩わしさを思い出しながら、ダウンジャケットを羽織る。
これから見るであろう光景に、胃の辺りのむかつきを覚える。
今回も第一発見者となれば、確実に疑われる事になるだろう。
だが不思議なもので、身体は向かおうとするのだ。
バイクに跨りエンジンをかける。
時刻は午前3時。
自宅から15分。
堤防の上にバイクを停め、下に降りていく。
今回は懐中電灯を持参したが、出番は無かった。
街灯の光が届いており、今回も揺れる足を照らしていた。
ゆらり、ゆらり・・・
相変わらず酷い。
PHSを取り出し、警察と救急車を手配。
今回は時間が掛かった。
そこから警察車両に乗せられ警察署へ。
丸一日拘束され、友人や両親が呼ばれ取り調べ。
後日再度送迎され話をさせられる。
私はある意味被害者だ。
真実とは創作物のようにはいかず、オチも無く、美談にもならない。
私は全ての指の指紋を採取され、めでたくブラックリスト入り。
その後夢で訴えかけてきたお二人から礼を言われることも無く。
まぁ、少しでも助けになったのならいいか。
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