第23話
翌週の事だ。生理用品を切らしてしまった。あると思っていた予備がなかった。
仕事終わりで疲れているけど仕方がない。少し遠いが二十四時間営業の大きなディスカウントストアがあるのでついでに消耗品をまとめて買ってしまおうと家を出た。
部屋を出て鍵を掛けると耳ざとい内勤が隣のドアからひょっこり顔だけ出す。髪から雫が垂れて、いかにもシャワー途中急いで出て来ましたといった様子だ。
「なに。どうしたの。どこいくのよ?」
「ちょっと買い物行くだけ。シャンプー切れちゃった」
「ええっやめてくれよ。俺の貸してやるからちょっと待ってて」
裸で出てこられても困るしこんな時間に生理用品を買うのに付き合わせるのはあまりも申し訳ない。
「タクシーで行くから大丈夫。ちょっと外の空気吸いたいし。すぐ帰る」
「帰りもタクシー使ってくれよ。五分ごとに電話で生存確認するからな」
「十分ごとにしてください」
あたしは小走りで外に出た。もう空は白くなり始めている。
化粧品も見たかったけど内勤が本当に電話をしてきたので必要な物だけを買い店を出た。タクシーは店の前で待たせていたのですぐに乗り込むと真っ直ぐアパート前に付けてもらい、支払いを済ませた。お釣りを受け取ろうと手を出すと、別の物が渡された。
むきだしの便せんだった。
「お買い物されてる間、ご友人の方がいらしてあなたに渡すように頼まれたんですよ。お店に入る所を偶然見かけたそうです。始発が出るからとすぐに行ってしまいたが。びっくりさせたいから最後に渡せと言われました。驚かせてすみません。はい。お釣りとレシートです。有り難う御座いました」
メールで内勤に帰宅を知らせると部屋に入り鍵を掛けた。買い物袋を玄関に放置すると爆発しそうな胸を押さえて便せんと向き合った。
bellsの権利証を探せ
書かれていたのはそれだけだ。達筆なのか悪筆なのかわからない文字を睨み続けた。キャスターが空になると、ベルスに行こうと決めた。
昼前、内勤が出勤する気配を合図にそっと部屋を出た。この時間に行くのは初めてだったけど、心配をよそにちゃんとベルスは開いていた。
いつもと違ったのは迎え入れてくれたのがマスターではなく、背の高いアルバイトだった事だ。会うのは初回ぶりだった。つまり二人で会うのは初めてだ。
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