第4話
事務所に戻ると入口の前で店長とはちあった。内勤はあたしを店長に引き継ぐと、そのままキャッチに行ってしまった。
事務所には既に店長のパソコンが置いてあり、電気も点いていた。
あいつ気に入ったかと聞かれ、良い人だと答えると着火音で返事をするかのようにピースに火を付けた。今のうちに吸っておけと言われ、あたしもキャスターを取り出した。
二人で煙草を吸っていると、外注を頼んだと言い出した。研修の話だ。
店長の知り合いがあたしの写真を見て連絡してきたらしい。断ったけど食い下がられ、金で話をつけてきたそうだ。そんなの別に構わない。そんな事よりこの人相手に食い下がるなんてよっぽどだ。一体どんな人だろう。
さっそく待機室に行くべきかと思ったけど、このまま事務所で待ってもいいと言われたので携帯を見たり化粧を直したりして過ごした。
出勤の女の子が職員室のような事務所に夢のように現れては消えていった。
みんな可愛かった。みんなあたしより、ずっと賢そうだった。
友達同士で来てる子もいた。昔誰かが言っていた、ここは受け皿だと。
この皿は湿気っているから、昼間の女の子はすぐに分かる。
近くに寄られると、どうにも肩身が狭くなって息がしにくくなる。
どうかあたしに気付かないでと願う。
あたしは人生が下手くそだ。
この世の全てにコンプレックスを刺激され、傷付いた。
多感だと気付いたときには性根が腐っていた。
腐っても気付いたらから生きてきた。
おなかがすくと人に頼った。
あばずれと言われるようになった。
今、あたしは甘んじてここにいる。
だけど、もし皿に落ちる前に戻れるなら、きっともっと、上手く立ち回る。
たとえばダブルワークとか。かっこいい。
恨まれるんじゃなく、友達を作ってみるとか。ひとりでいい、大切にして、その子が困ったら、誰より先に助けてあげるのだ。
あたしがいつか、してもらいたかったように。
いつだってどこだって、人は助け合って生きている事を知っている。
他人のそういう器用さが、あたしは今でも、死ぬ程羨ましい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます