ツイントーーク!① 夏に向けて……?

 夜、宇佐見家のリビングにて、


「ふぬぬぬぬ! ふぬぬぬぬ! ふんぬぅーーーっ!」


 と、必死な形相で千影が腕立てをしていた。


「ちーちゃん、筋トレしてるの?」

「夏にぃー……! 向けてぇー……! ダイエッツーーーッ!」

「……なんで複数形?」


 顔を真っ赤にしながらペタンとへたり込む千影。光莉はその横でソファーに腰を落ち着け、呑気に風呂上がりのカリカリくんソーダ味を食べ始めた。


「もう! ダイエッターの目の前でアイス食べないでくれる⁉」

「ダイエッターって……」


 光莉は自分の手に持っているカリカリくんをニコッと千影に向ける。


「ひと口食べる? はい、あーーー……」

「うん♪ あーーー……じゃなくって! ダメだって言ってるの!」

「おお、土壇場で理性が勝った……」

「だって、咲人くんへの愛のためだもの!」


「……どゆこと?」


 すると千影は、女性向けファッション雑誌『am・am(アム・アム)』の特集号をすっと光莉に差し出した。


「『気になるカレを魅了する愛されボディメイク術』?」

「フフン! これを使えば夏までにPERFECT BODYになれるはず!」

「あ、うん……もう夏だけど、そんなことより英語の発音めっちゃイイね……?」

「ひーちゃんも鍛えておかないと……うっ……」


 千影は風呂上がりの光莉の全身を見て、思わず呻いた。


 キャミソールの下はショートパンツなのだが、濡れた髪、火照った柔肌、ほんのりと赤みを帯びている全身は、思わず生唾をゴクンと飲んでしまうほど色っぽい。

 普段なんの運動もしていないというのに、出るところは出て、引き締まっているところはちゃんと引き締まっている。


 同じ双子だとは思えないほど、光莉のBODYは今日もPERFECTだった。


「な、なぜ……私の遺伝子、どこがひーちゃんと違うというの……」

「……なにが?」


 地面に手をついて落ち込む千影を見ながら、光莉はそれとなく身体を見た。


 鍛えるまでもなく、千影のプロポーションは完璧に見える。

 胸のサイズは自分よりワンサイズ上で、肉付きはいいが、けして太っているというわけではない。千影は自分に自信がなさすぎるのだと思う。むしろ、ワイシャツのボタンを飛ばしてしまった自分のほうが、太っているほうではないかと光莉は思う。


「ところでさぁ、お昼休みに咲人くんとちゅーしようとしてたよねー?」


 千影はギクッとなって顔を上げた。


「うちがいないところでちゃっかりやってんねぇ〜?」

「アレは、その場のななな……流れで!」

「流れって、どんな感じかな? 途中からしか見てなかったし、教えてほしいな」


 千影は思い出したように——


「キュンってなったの……『俺がお前のことを守ってやるぜ!』って言われて……」


 ——出していない。半分以上妄想の咲人になっている。


「なにそれっ⁉ ほんとに咲人くんが言ったのかなっ⁉ うち、そんな感じで言われたことないよっ!」

「だよね……私も最初驚きだった……」


 おそらくこの場に咲人がいたら、彼のほうが驚いていたことだろう。


「ほかにはほかには⁉」

「あとは流れで……あぁもう思い出しただけで恥ずかしい〜〜〜……!」

「ちーちゃん! そこ大事っ!」


 羞恥で真っ赤になっている千影のそばで、光莉は興奮気味にパタパタと手を動かす。


「えっと、あとはひーちゃんが見てたところからで……見つめ合って……」

「うんうん!」

「顔を近づけていったら……」

「それでそれで⁉」

「……ひーちゃんに邪魔された」


 千影の瞳に悲しみが宿ったのを見て、光莉はカリカリくんの色ほどに青ざめていく。


「……スミマセンデシタ」

「……うん」

「……アイス、食ベマス?」

「……うん。——あ、当たりだ」



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1巻発売直後から連続重版! 「アライブ+」でコミカライズも決定!


「双子まとめて『カノジョ』にしない?」

2巻は2月20日発売!


予約はこちらから。

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2巻ゲーマーズ & メロンブックス

タペストリー付き特別限定版も予約スタート!!


ゲーマーズ (千影)

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メロンブックス (光莉)

https://bit.ly/48JjsZ6


公式Xでも連載中!

https://twitter.com/jitsuimo


特設サイトはこちら。

https://fantasiabunko.jp/special/202311futago/


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次回更新は 1月30日(火)!


相変わらず新聞部に学校で追い回されている光莉。

そんな光莉に連れ込まれて、咲人と千影も巻き込まれる!?

そして、定番のロッカー隠れるシチュエーションが……3人で!?

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