第128話 ずっと一緒にいようね
そして来たる7月5日、シウの誕生日———ユウ達はイコさんの知り合いのバーを貸し切って、盛大に祝うことになった。
ユウ達が店に着いた瞬間『パンパンパン』と盛大なクラッカーで出迎えられた。
「きゃー、シウー! 二十歳おめでとう! これ、私達からのプレゼント。ユウさんと一緒に使ってね♡」
「和佳子も雪村さんもありがとうございます」
和佳子にもらったプレゼントはペアの夫婦茶碗。これでは誕生日プレゼントなのか結婚祝いなのか分からないとツッコミを入れたくなったが、シウが嬉しそうなのでスルーすることにした。
「シウさん、私達からはこれを。写真立てです」
寿々から貰った写真立ては三面写真を飾ることが出来るガラス調のもので、中央にはユウと一緒に撮った結婚ドレスの写真が飾られていた。
「寿々さん、瀬戸。なんでこの写真……」
「ユウさんに言って焼き増ししてもらったんだ。だって結婚式しないって聞いたからさー、それならと思って。残りの二つはシウの好きな写真を入れていってよ」
自分達よりも先に家族になって思い出を積み上げている先輩達ならではのプレゼントをシウは大事そうに抱えた。
「学校が別れてから中々会えねぇけど、たまには俺達とも遊んでくれよ? ってか、ここのバーって雰囲気いいな! 俺も常連になろうっと!」
「瀬戸は二十歳になってからだよ? それとあまりハメを外すとママさんや常連のお客さんに怒られるから気をつけてね」
「えー、何で俺はいつもそんな言われてばっか? もうガキじゃないのにー」
「でも瀬戸は瀬戸だからねー」
「そうだよ、大成くん。仕方ないよ、ふふ」
寿々さんにまで言われて諦めた瀬戸くんは、渋々テーブル席に着いてチビチビとジュースを飲んでいた。
こうして三組のカップルと飲みにきている内に仲良くなったバーの常連さんと一緒に、シウの誕生日を祝うことになった。
予め頼んでいたピザや唐揚げ、ナゲットなどをテーブルに並べて和気藹々と語らいながら、各々が楽しい時間を過ごしていた。
そんな中、一人離れたカウンター席で飲んでいたユウは、シウの楽しそうな様子を見ながら静かにお酒を味わっていた。
「やけに静かだけど大丈夫? もしかして具合でも悪い?」
「雪村か。いや、色々考えていてさ。イコさんがシウを妊娠して産んで、もう二十年経つんだと思うと感慨深くて」
初恋の女性が産んだ娘と、婚約者という関係になるなんて、誰が想像していただろう?
振り返れば色んなことがあった気がして、目頭が熱くなる。
「よくよく聞くと、本当に不思議な話だよね。16歳の幼馴染の娘となんて。永谷とシウさんの話を聞くと、二人は結ばれるべき運命の者同士だったんだと思わされるよ」
雪村も人のこと言えないくせにと思ったが、あえて口を挟むのをやめた。シウ伝に聞いたことだが、とうとう雪村も和佳子さんに正式なプロポーズを伝え、婚約関係になったそうだ。短大を卒業したと同時に式をあげるそうだ。
「っていうか、僕も本当はシウと結婚式を挙げたかったのに。こんなことなら前の写真の時に挙式だけでもすれば良かった」
項垂れるように嘆いているユウを見ながら、雪村は和佳子とアイコンタクトを取って頷いていていた。こんな時までイチャイチャするなんてとシウに助けを求めたが、肝心の彼女の姿が見当たらなかった。どこに行ったんだ?
キョロキョロと落ち着きがないユウの腕を雪村は掴み、ニッと口角をあげて告げてきた。
「なぁ、永谷。シウさんがお前に伝えたいことがあるって」
「え?」
「ユウさーん、バシっと決めて下さいよ? バシっと!」
急に店内が暗くなったかと思うと、BGMが変わり一気に雰囲気が変わった。スポットライトが二階の階段に当てられ、真っ白な純白のドレス姿を纏ったシウが姿を見せた。
肩が大胆に露出したAラインの大人っぽいデザイン。ヴェールを被った神秘的な光景にあの時も綺麗だと感動したが、今もまた違う色気が漂っていて美しかった。
「ユウ、似合うかな……?」
恥じらうように上目で覗く仕草に一瞬で心臓を鷲掴みされた。似合うどころじゃない。こんなに綺麗な花嫁が自分の妻になるなんて、夢のようで涙が込み上がる。
「すごく綺麗だよ。でも、どうしたんだ? そのドレス」
「実はお母さんからプレゼントしてもらったの。今ってネットで何でも買える時代だからビックリだよね。せっかくだから記念に着なさいって言われたの」
グッジョブ、イコさん!
諦めていたシウの花嫁姿を見ることができて、ユウのテンションは最高潮に上がっていた。だが、これからどうすればいいんだ?
実際の式とは違い、何も手順が決まっていないから何をすれば良いのか困ってしまった。
「ユウさん、誓いのキス! シウにカッコよくプロポーズの言葉を言って、キスして下さいよー!」
相変わらず空気を読まない瀬戸くんだったが、今回は助かった。ユウ跪きシウのウェディンググローブを取ると、そのまま指にキスを落とした。
プリンセス映画のワンシーンのような光景にオーディエンスの声が一際大きくなる。
シウの顔も感動で紅潮していくのが分かった。だがそれ以上にユウの指先が柄にもなく緊張して震えていた。頭が真っ白になりそうだった。だがここで失敗するワケにはいかない。今まで散々待たせてきたんだ。
「シウ。君のことは僕が一生守るから、僕と結婚して下さい」
ユウの言葉にシウは涙を溜めて、そのまま深く頷いて「こちらこそ、よろしくお願いします」と満面の笑みで応えてくれた。そしてそのまま抱きついてきたシウとキスを交わし、強く抱擁し合った。
「良かったわねー、シウシウ! ほら、このシャンパンはママからの奢りよ! 二十歳になったんだから飲みなさい! それとも私のお酒が飲めないなんて言わないわよねぇー?」
目尻の涙を拭いながらボトルを持ったママがグラスを勧めてきた。だがそんなママのお酒をシウは申し訳なさそうに断っていた。
「ごめん、ママ。シャンパンは飲めないんだ。いつものようにオレンジジュースをもらっても良いかな?」
「もう、シウシウ! つれないじゃない! 何事も冒険しないと人生つまらないわよ?」
「飲みたいのは山々なんだけど……ごめんね?」
シウは愛しそうにお腹を撫でながら舌を出して可愛く謝ってきた。
え、まさか———?
パクパクと慌てながらお腹を指差すと、幸せそうな笑みを浮かべながらスマホの写真を見せてくれた。陽性反応を示した妊娠検査薬。
「ユウ、私達パパとママになるんだよ♡」
いつの間に———⁉︎
全く聞かされていなかった事実に、ユウも驚きを隠せなかった。確かにここ数ヶ月は避妊せずに情事を営んでいたが、それでもだ。
だが、それ以上に嬉しい。思わずシウを抱き締めて新たな命の誕生を喜んだ。
「シウ、サプライズ大成功だね!」
「永谷も良かったね。それにしても父親か……羨ましいな」
驚いて声も出ないユウに二人が声を掛けていた。だが油断していたのはユウだけでなかった。次の言葉に雪村も言葉を失うことになる。
「そーんな雪村さんに私からもサプライズ! 実は私も雪村さんとの子供を妊娠したから、同じくらいの時期に生まれるかも♡」
「———え?」
嘘だろ⁉︎
ダブルの妊娠報告にその場にいた全員が驚きを隠せなかった。まさかと思って和佳子さんに話を聞いたが、二人で使用した検査薬の写真を見せられて、店内は喜びの声で溢れた。
こうしてシウと和佳子は、仲良く幸せを掴んだのであった。
・・・・・・・・・・★
「……ということで、ここまで読んでくださった皆様。よろしければこの子供達の名付け親になって頂けませんか? この名前がいいと思った方は、ぜひコメントにお願い致します!」
ユウとシウの子供は女の子。
雪村
そして水城廉と胡桃さんの男の子も名前が決まってないので、ぜひお願いします!
……っと、最終回、歯切れが悪かったので、誕生日会後の二人の対談も載せますのでもう少しお付き合いお願いします(>人<;)
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