第117話 背徳甘党パーティー

「ねぇねぇ、雪村さん! こっちにはほら、シウと一緒にお菓子を沢山用意したんですよ? 雪村さんは甘いの好き?」

「うん、好きだよ。でもこの時間からこの量を食べるのは中々の……」


 ポッキー、チョコ、チップス、グミにマシュマロ。色とりどりのお菓子達がズラッと並んで圧巻だった。シウと和佳子さんがどれだけ楽しみにしていたかが伝わってくる。


「え、もしかして今からパーティーの流れ? もう11時過ぎてるけど?」

「ユウは仕事だけど、私達は学校休みだし。雪村さんも休みなんでしょ? いいよ、三人で楽しむからユウだけ先に休んでても」


 さっきのメイド服への塩対応が尾を引いているらしい。何度話しかけてもツーンと素っ気なくて、それはそれでツンデレみたいで可愛いのだが。


「そんな拗ねないで。皆の手前、あんな態度をとっただけだよ。本当は今すぐ抱きしめたいくらい可愛いと思ってるから」


 彼女の両手を掴んで、逃げられないようにしてから耳元で囁いた。そんな素直な言葉にシウも少しずと顔を赤く染めて、唇を尖らせて「……本当?」って少しデレ出した。


 本当に決まってるだろう。こんな可愛いメイドさんが自分の為だけに存在するなんて贅沢過ぎる。

 雪村も同じように思っているんだろう。付き合いたてならではの甘い空気が完全に二人だけの世界を作り上げていた。雪村に限って他の人の家で行為をするような無礼者ではないと思うが———……和佳子さんにスイッチが入り過ぎているので多少心配である。


「ねぇ、ユウ。今日は和佳子達泊まって行ってもいいんだよね?」

「え、いや……それはいいけど、和佳子さんは泊まるって言ってたの?」

「うん、今日頑張りたいんだって♡」


 やっぱりそうだよなー……! いや、この気合いの入れ具合は予想していたが、ユウは雪村に同情を覚えた。


「———悪いことは言わないから、その、シウの方からそれとなく今日は耐えるように伝えてくれないかな?」

「それってどう言う意味? え、何で? せっかく和佳子も頑張って誘っているのに?」


 いや、わかるよ? 気持ちは分かる!

 だがユウには雪村友人の気持ち痛いほど分かるのだ!

 きっと雪村もユウと同類で、二人の初めては気合いを入れたいタイプだろう。和佳子さんがツラい恋をしたからこそ、元彼を上回るサプライズを計画しているはずなんだ。


「えー……? そんな回りくどいことしなくてもいいのに。早く行動してくれた方が女子は安心するのに」

「奥ゆかしい日本女性はどこにいった? いや、大人になると面倒くさくなるんだよ……。それが僕らなりの誠実さだと思ってもらえると嬉しいんだけど」

「ふぅーん……、仕方ないか。それが私が好きになった人なんだもんね。いいよ、でもさイチャイチャしちゃいけないわけじゃないよね?」


 ニヤっと笑うシウにイヤな予感しかしないんだけど?

 だがシウはヒョイヒョイっと猫のように和佳子さん達のところへと行って、耳打ちするように話し出した。


 ———大丈夫か? アレ……。


 今度は雪村に話して、全部言い切ってご満悦な表情でユウの元へと戻ってきた。


「え、何を言ったん?」

「別に普通だよ? 二人のペースでゆっくりと、でもちゃんと素直に大好きを伝え合って、二人の時間を楽しんでくださいって言ってきたよ」


 それって逆に火に油を注いでいないか?

 心配するように二人を覗き見たが、すぐに余計なお世話だったと思い知った。


 恋愛のはじまりの頃って、一緒にいれるだけで……手を繋いで体温を分かち合うだけで幸せな気分になれるんだ。


 あの二人なら大丈夫だろう。慌てなくてもちゃんと思いが通じ合っている。快感で相手を繋ぎ止める必要はないんだって、互いに分かっている安心感があった。


「二人の邪魔をするのも可哀想だし、僕らも部屋でココアでも飲もうか? シウはホットミルクにする?」

「それなら私がお淹れしましょうか、ご主人様?」


 メイド服を纏っていたことを思い出したかのように、スカートの裾を指で持ち上げ、軽く会釈をした。

 このしおらしい従来のメイドのような対応の方がユウの好みだった。キャピキャピと可愛らしいのもいいのだが、やっぱりメイドはこういう態度がいい。

 赤くなった顔を手で隠しながら「お願いします」って頼むと、シウも満足そうに笑みを浮かべてキッチンへと小走りで向かっていった。


 ・・・・・・・・・★


 ちなみに雪村と和佳子ちゃんは、朝方までずっと語りっぱなしだったそうだ。まるで学生のような初々しい時間の過ごし方に少し憧れを抱きつつ、この二人の幸せを心から願うユウとシウだった。


 ・・・・・・・・・・★


「良かったの? 和佳子。進展なかったみたいだけど」

「うん、めちゃくちゃ楽しかったから大満足! それに雪村さんがスゴーく大事に想ってくれてるのが伝わってきたから、私も待つことに決めたよ♡」


 次回は6時45分予定ですが……もうすぐクリスマスですね💦 そろそろラストスパートかけたいです><


 なのに書きたい話が多過ぎる……!

 ちゃんと年内に終わるのかな?💦

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