第116話 ・・・★ どうする? 何する? 【シウ視点】

 ・・・★ シウside...


「ねぇねぇ、シウー。今日なんだけどシウ達の家に泊めてくれないかな?」


 ユウが珍しく職場の人と飲みに行くと言ってきたので、和佳子の話を聞こうと一緒にご飯を食べにきていたのだが、何で泊まり?

 シウは首を傾げて理由を尋ねた。


「今日のユウさんと一緒に飲んでるのって雪村さんなんだよねー。でもさー、ほら私達ってお互い実家だからイチャイチャしようにもいつも逃げられてばかりで、つい決め手にかけちゃって……」

「へぇ、雪村さんって実家なんだ。意外だね」

「奥さんと一緒に住んでいた部屋を急遽解約したから、やむえず実家に戻ったらしいよ? あーん、ホテルに誘おうにもはぐらかされるし、カラオケも警戒されてるし、ダメなんだって〜」


 それでウチで頑張りたいと。

 確かに雪村さんもユウに似て真面目そうな性格だと印象を受けた。このままでは結婚するまで操を立てましょうと言いかねないかもしれない。


 それがどれだけ苦痛なのかをシウはイヤってほど痛感している。

 しかも元奥さんという女性の影がチラホラしていると、余計に焦りが生じるのだ。


「いいよ、和佳子。うちの部屋に泊まって。どうせ私はユウと一緒に寝るし、和佳子は雪村さんと一緒に寝たらいいよ」

「シウシウー……っ! 本当にシウっていいこだよね! もう私が男だったから絶対シウに惚れてるよー」

「それでも私はユウ一筋だけどね」

「うん、それは知ってるよー♪」


 アハハーっと気の抜けるような笑いをかまして、シウ達はコンビニでたくさんのお菓子を購入してからマンションへと向かった。

 互いに顔見知り同士だと、デートの幅が広がって楽しいし、嬉しい。

 しかも和佳子は元カレと付き合っていた時よりも楽しそうなのが何よりもシウは嬉しかった。


「ねぇ、和佳子。雪村さんってどんな人?」

「え、何急にー! えっとねー、雪村さんは優しくて、大人でー、しっかりしてる人かな?」


 ———見た目通りの人ってことかな?


 この前お会いした時はユウに似てると思ったけど、どうなのだろう? 個人的にユウの交友関係を知らないのでとても気になるのだ。


「ちょっと意外だったのが漫画オタクってことかな? 家には沢山の単行本を集めているし、一緒にいる時もスマホで漫画ばかり読んでるから驚いたよ?」

「そうなんだ。どんな漫画を読んだりしてるのかな?」

「ツインテールのエルフの魔法使いの話とか読んでいたよ? 他にもボカロの歌い手さんとか好きだったり、結構趣味は親近感が湧いて嬉しかったなー」


 ふむふむ……とシウは納得した。

 雪村は意外とオタクなのかと。


「それなら和佳子。せっかく二人の帰りを待つならさ、ちょっと相談があるんだけど……」

「え、何々ー?」


 そう言って帰りにドンキに寄って、二人は色々と計画を立てて用意をし始めた。




 それから時刻が10時を回った頃、やっとユウ達が帰り着くと連絡が入った。


「ねぇ、シウ……! ほ、本当にこんな格好でいいのかな? 雪村さんもドン引きしないかな?」


 心配する和佳子がしている服装は、秋葉原で「ご主人様♡」とハートを作っていそうなメイドさんだった。そう、一線超えちゃう為に優しく誘惑しちゃおう作戦だ。


「和佳子は可愛いから大丈夫だよ。私も一緒におもてなしするから」


 リビングには沢山のお菓子とケーキを用意して待っていた。後は二人が帰ってくるのを待つだけだ。


 そんな話している間に玄関が開く音がした。二人が帰ってきたようだ。


「和佳子、行こう!」

「よ、よーし! 「お帰りなさいませ、ご主人様♡」」


 バーンと扉を開けた瞬間、驚きの表情を見せたユウと雪村。あまりにも想定外なお出迎えに、流石にあいた口が塞がらなかったようだ。


「わ、わ、和佳子さん? え、その格好は?」

「これはシウと一緒にドンキで買ってきまし。似合いますか?」


 クルッと一回りする和佳子を見て、思わずニヤける口元を塞ぐ雪村。一方サプライズ慣れしてしまったユウは「へぇー、今度はメイド服買ってきたんだ」と、ツマらないリアクションを見せていた。


「………ユウはもっと面白い反応を示して欲しかった。もうバカ」

「え、何で? え、意味が分からないんだけど?」


 とりあえず帰ってきた二人をリビングへと案内し、四人で行う楽しい二次会が始まろうとしていた。


 ・・・・・・・・・・・★


「永谷、お前はいつもこんなおもてなしを受けているのか……! 悪い男だな」

「いや、いつもこんなんあるわけないから……! いやいや、勘違いしないで、本当に!」


 さて、二次会の開始です!

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